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働き方の未来に対する態度を考えたい ── 『ワークシフト』を読んで

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未来は決まるのではなく決めるものである、とはよく言われる。精神論としてはその通りだと思うが、真実は「未来は決まるものであり決めるものでもある」だと思う。

未来に対する態度のことで、自分は確か小学生の3年生頃に先生と激しく対立したことがあった。自分は「宿命」という言葉を使ったことを鮮明に覚えている。先生は「未来は自分が決めるもの」ということを道徳として教えようとしていたのだが、私が「未来は宿命です。最初から決まっている。」と反論したことで授業をしらけさせてしまった。クラスのみんなからも嫌な奴を見るような視線を感じたことを今でも憶えている。

宿命という言葉は先生の意図に反する響きがあったようだが、(運命を)宿すとあるように未来を決める素質は自分自身が持っていることを言っているので、「自分が未来を決める」ことを否定しているわけではない。未来が宿命だというのは、「決まるものであり決めるものである」ということを自分は言いたかったのだ。これが先生やクラスの皆に伝わらず、苦々しい思い出が残った。

今でも、未来に対する態度についての話題が登ると、自分はいつもこの苦々しい記憶を呼び起こす。

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ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
リンダ・グラットン(著)、池村千秋(訳)

さて本書は、「働き方の未来」を予測しようとしたものだ。著者のリンダ・グラットン氏はロンドン・ビジネススクール教授であり、フィナンシャルタイムズが「今後10年で未来に最もインパクトを与えるビジネス理論家」と賞する学者でもある。著者は私たちに「2025年にどんな働き方をしているだろうか」と問いかける。これに二つのシナリオを提起している。

一つ目のシナリオは「漫然と迎える未来」、二つめのシナリオは「主体的に築く未来」

極端なイメージに見えるが、この二つのシナリオが未来に対する態度として描かれている点に注目したい。

「漫然と迎える未来のシナリオ」には暗い現実が待ち受けている。そこには端的な姿として「いつも時間に追われ続ける」「孤独にさいなまれる」「繁栄から閉め出される」などの様相がいくつかのエピソードとして紹介されている。


他方、「主体的に築く未来のシナリオ」には明るい未来が描かれている。端的な姿として「コ・クリエーションによって大きな仕事をやりとげる」「積極的に社会と関わる」「ミニ起業家が活躍する」といった様相がエピソードとともに紹介されている。



最初の話に戻るが、漫然と迎える未来のシナリオは「未来は決まるものである」という気分に支配されているといっていい。反対に、主体的に築く未来のシナリオは「未来は決めるものである」という気分にあふれている。極端だがいずれのシナリオも真実をついているように思われる。現実の未来の姿はこの二つを混ぜた姿になるのであろうか。

本書は単なる技術予測、経済予測ではない。私たちの働き方の未来に対する態度という切り口で未来予測を立てている点で、私たちの今の働き方に強い反省をうながすのではないかと思う。


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