組織変容に基づいたキャリア論を考える 『2022─これから10年、活躍できる人の条件』を読んで
「先の見えない時代になった」とどこでも聞くようになった。
欧州経済の危機、円高と空洞化、雇用の悪化、、、とまあ、心配なことを上げればきりがないが、そんな出来事が「先が見えない」ことの背景にある。
しかし本音でシリアスにこの時代を捉えている人は少ないだろう。多くの人は「今まで無事にやってこられたから.」という自信がどこかにある。そういう人はそれでいいと思うし、ことさら不安がっても仕方がない。確かに昨年は震災やタイの洪水被害に見舞われたが急速にリカバリーしてきている(直近の日経予想では2012年度の上場企業の利益は前期比17%減になるとのこと)。
だが新興国が一生懸命がんばっているのに、自分たちが普通の努力しかしなければ沈んでいくのは自明だ。日本にいるというだけでこの先も同じような暮らしができるとは思えない。
そもそも長期に起きる脅威はリアリティを感じづらく、それ故に抗しがたいものがある。お店に行けば海外のものを普通に目にし、それは脅威どころか有り難いとさえ思っている。だから悲劇のシナリオをぶったところで共感されず、むしろ希望の計画を立てている人がこれからのリーダーになるのだろう。
2022―これから10年、活躍できる人の条件
神田昌典(著)、 PHPビジネス新書
本書は経営コンサルタントの神田昌典さんが、今から10年先の2022年に起きる時代変化を踏まえた、キャリア論である。軽快なタッチで書かれているので、予測のロジックや精度の検証に気を取られすぎなければよいと思う。ある程度前提を信用して読めば、時代という絶対的な時間軸で展開されるキャリア論がとても面白い。
とくにお勧めなのは、30代──会社の中核人材として今のキャリアにますます厚みを持たせていこうとしている、加速モードに入ったビジネスパーソンたち。
それから40代──今までの自分を壊し、別の行き方を模索しようとしている、転換期に入ったビジネスパーソンたちにもお勧めだ。
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「2024年、会社はなくなる?」
第4章はこんな脅しめいたタイトルになっている。同じような予想なら他でも聞いているという人は多いと思うが、実際に起きたら相当にシリアスな事態になるだろう。
しかし会社が無くなっても居場所が本当に無くなるわけではない。神田さんは会社に代わってNPO法人が新しい居場所になっていくという。ご周知のとおり、会社(株式会社)は営利組織で、NPOはNon Profit Organization、つまり非営利組織だ。神田さんはドラッカーが『ネクスト・ソサエティ』に書いた予測を借りてそう言っている。
≪第1段階≫ ~2015年 企業組織の混乱
≪第2段階≫ 2015年~ NPO時代の夜明け
≪第3段階≫ 2020年~ NPOによる産業化
社会が営利より非営利を選ぶようになる一番の理由は、今までは社会性と収益性は矛盾すると思われてきたが、これからは社会に良いことをしなければ会社を続けることが難しくなってきているからだ。だからといって会社が無くなるわけではない。信じたくない人は会社が非営利的に運営されるようになると思ってもくれたらいい。
NPOを作るというのはいわゆる社会起業家になるということだが、出現するパターンは、企業から事業がスピンオフする形態や、新事業として始める形態が多いだろう。社会経験の無い人がいきなり起業するというよりも、バリバリの経験を持った人が起業するというイメージだ。そういう人が被災地に行ってボランティアを束ねたり、過疎地にいって農業の再生を図ったりする。
初めのうちは小さな動きだろうが、優れた人たちから会社の外に出て行き、新事業の実績を残していくうちに、後に続く人が急に増えるポイントが訪れる。それが神田さんの予想する2020年代の「NPOによる産業化」のタイミングだ。
NPOが単体ではなく複合体として存在感を増し、磁石のように人を引きつけるようになるのには理由がある。既存の会社にいても創造的な経験を積めない、人材が育たないということが誰の目にも分かってくるからだ。
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以下は、本書に基づいて組織変容のシナリオを展開図にしてみた。
お節介になるかもしれないがが、自らのキャリア形成を時代変化に基づいて考えてみたい人は、まず組織変容の姿を時間軸で描いてみてはどうかと思う。
「その気はあるがリーダーシップの経験が無い」という人や、「スキルに自負があるが自分がリーダーになるイメージが持てない」という人は、自分の居る組織がどう変化するかをイメージしてみるのだ。このブログをじっくり読んでくれている人は、きっと慎重なタイプで周りがどう見ているかを気にするタイプだと思うからだ。
組織の変容を描くうえでカギになるのは「強み」、つまり組織にとって大事な強みは何か?だ。
強みとは、ヒト・モノ・カネなど有形の資源だったり、情報やプロセス、文化などの無形の資源だったりする。とくに後者はお金で買えず、簡単に備えづらいという意味で、大切にしたい資源だ。3段階で変化することを想定し、現在(第1段階)ところは埋めてみたが、第2段階、第3段階はどうだろうか?
結局は同じ結果につながるのだと思うが、それが「自分の居場所が変わる」ことの答だと思うのでぜひ。