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『アジャイルレトロスペクティブズ』邦訳出てます!

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Arkdmsnr さん訳の『アジャイルレトロスペクティブズ』邦訳出てます!(紹介おくれました)
http://www.amazon.co.jp/dp/4274066983/

この本はぼくが大好きな洋書の翻訳です。なぜ好きかといいますと

「ソフトウェア開発プロジェクトという現場を、人生の時間をすごすのにふさわしい有意義な場にしたい」

という願いが、著者の二人の共通の動機だからです。私もその趣旨の活動を行っているつもりですし、少しずつ、これらの活動がまとめられて、形になり利用されていくようになることで、現実が変わって行くのだと思っています。

縁あって、本書日本語版の前書きを書かせていただきましたので、引用します。

日本語版へのまえがき

チームをもっと活気づけたい、チームの会議をうまく進行したい、問題続きのプロジェクトをなんとか変えたい、チームの改善活動を推進したい、チームのメンバーにもっと笑顔を増やしたい…。

本書は、そんな悩みをかかえる現場リーダーの方向けに、とても具体的な方法でチームを前向きに変えるミーティングの仕方が解説されています。明日から使える手法集、原則集として、あなたの現場を変えるきっかけになるでしょう。その手法の体系が、レトロスペクティブズです。

歴史について簡単に触れておきましょう。本書の原題は、「Agile Retrospectives」(アジャイル・レトロスペクティブズ)といい、2000年頃からソフトウェア開発手法として広まってきている「アジャイル」の文脈に位置づけられます。Norm Kerthが「Post Mortem」(プロジェクト検死)と呼ばれていたプロジェクト終了後の失敗原因分析活動を、より前向きに「Project Retrospectives」(プロジェクト・レトロスペクティブズ)と再定義して出版したのが、レトロスペクティブの出発点です。そして、それが2000年以降の大きなアジャイルムーブメントと融合し、繰り返し型開発の中でチームが自己革新していく手法として取り入れられるようになったのです。私が最初にこの手法に出会ったのは、2003年に米国ソルトレイクで開かれたAgile Development Conference 2003 において、Linda Rising がファシリテートするレトロスペクティブのワークショップに参加したときです。その後、私も日本でこの活動を自分のプロジェクトに幾度も適用し、その威力を実感しました。人間が本来もっている「過去をふりかえって、未来をよくする」という力を引き出すための手法として、とても有効に機能するのです。しかし、ソフトウェア開発にコンテキストを絞っての具体的な運営方法についての知見は、これまでまとまって解説されることがありませんでした。本書では、レトロスペクティブの活動を5つのステージを分け、それぞれに具体的な手法を紹介することで、すぐにでも使えるファシリテーションのハンドブックになっています。

ここで、著者の二人について紹介しておきましょう。Diana LarsenとEsther Derbyは、ともに社交的な女性で、Agile Alliance でも重要な役割を担っています。EstherとDianaの自己紹介文書から、一節を取り出してみます。

Esther:

My passion is around improving the work-life of teams-restoring pride and enjoyment to the work of building software products. Life is just too short to work on crappy projects that suck people dry and produce mediocre results. It doesn’t have to be that way.

私の情熱は、ソフトウェア開発の仕事に、誇りと楽しみをとりもどすことで、チームの仕事ライフをよりよくすること、にあります。人をダメしてしまう、くだらないプロジェクトに時間を費やすほど、人生は短くありません。そうじゃない方法があるはずです。

Diana:

My past experience has taught me that involvement in a leadership role in professional organizations pays off in numerous ways – both personal and professional – for me and for the organization.

私は、リーダーシップをもった人が企業組織に与える影響の大きさについて、過去の経験から学びました。その影響は、個人的なものとプロフェッショナルなもの両方。自分自身と組織についての両方に及ぶのです。

二人とも、ソフトウェア開発の人間的側面に強い洞察と経験をもっていることが伺えるでしょう。

また、訳者の角征典さんは、Martin Fowler のbliki(彼のブログとwiki)をここ数年にわたって日本語に訳されており、平易で正確な翻訳力と、オブジェクト指向からアジャイルに脈々と流れるマインドについて深い理解の両方をもっています。角さんの訳で、本書の日本語が読めることは、現場エンジニアの大きな支えになるでしょう。

最後に、日本での状況について、少し補足をしておきます。日本では、なかなか開発現場へのアジャイルの浸透に時間がかかっています。しかし、アジャイル開発ではなくても、現場を活性化するため場作り手法には、注目が集まっています。私自身、「プロジェクト・ファシリテーション」として体系化を進めているプロジェクトの運営手法にも、レトロスペクティブを取り入れています(私は「ふりかえり」、と呼んでいます)。本書では、日本語版に特別に、KPTという手法を著者の許可を得て追加しました。これは、Alistair Cockburnが1999年に「アジャイルソフトウェア開発」で紹介したもので、日本ではこの手法でのふりかえりが多く実践例としてあるからです 。「レトロスペクティブズ」という英語は、過去をふりかえる、という意味です。日本語では、「回顧」や「反省」などと訳されることが多いですが、「回顧」だと思い出にひたるような郷愁が含まれますし、「反省」だと過去の失敗を悔い改める、というネガティブな意味が強いように思われます。わたしは、もし日本語にするのであれば「ふりかえり」と訳すのが一番すきです。それは、人間が前に進むために、一回後ろをふりかえってみる、「前進のための思考」という意味が語感に含まれるような気がするからです。例えて言えば、体をまえに向けたままで後ろを一回振り向く「見返り美人」のようなイメージでしょうか。

本書が、チームの活性化に役立ち、プロジェクトがみなさんの人生の時間を費やすにふさわしい場所と時間となることを願っています。

2007年9月1日
平鍋健児

昔、洋書のレビューを書きましたので、その記事も合わせて張っておきます。(マインドマップつき)
http://jude-users.com/en/modules/weblog/details.php?blog_id=13
http://blogs.itmedia.co.jp/hiranabe/2006/08/agile_retrospec_e020.html

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