ファストファッションが倒される日

アパレルビジネスの世界は、思いのほかダイナミックに動くものです。
日本の若者向けファッションを見ても、
1960年代半ばから
アイビールックのVAN全盛時代を迎えたと思ったら、VANは1978年に倒産。
代わって台頭したのがDCブランドです。
こちらもバブル経済の波に乗って爆発的に広がりましたが、
それもバブル崩壊と時を同じくするかのように失速しました。
続いて登場したのがセレクトショップです。
しかし、そのセレクトショップも、
いつしかオリジナル商品が売上の中心となり、自らがブランド化していきました。
そして2000年代に入ると、
企画・製造・物流・販売までを自社で一貫して行うSPA(製造小売業)が急成長します。
代表的な企業としては、ユニクロ、ZARA、H&Mなどが挙げられます。
高品質な商品を比較的低価格で提供するSPAは、多くの消費者の支持を集めました。
2026年現在では、
こうした低価格アパレルは若者だけでなく幅広い世代に支持され、
アパレル業界をけん引していると言っても過言ではないでしょう。
しかし、ここで思い出してほしいのが、日本のアパレル業界の歴史です。
VANが若者文化の中心だった時代も、
DCブランドが全盛を誇った時代も、
セレクトショップが新しい時代を切り開いた時代も、
永遠には続きませんでした。
新しいビジネスモデルが登場するたびに、
それまでの主役は少しずつその座を譲ってきたのです。
そう考えると、現在の低価格SPAやファストファッションも、
いずれ新しいビジネスモデルに主役の座を譲る日が来るのかもしれません。
その理由としてまず考えられるのは、低価格を支えてきた生産体制の軋みです。
現在では、極端に低い賃金での労働環境に対し、
世界的に厳しい目が向けられるようになっています。
これは人権という観点から歓迎すべき流れですが、
超低価格を前提としたビジネスモデルにとっては大きな課題となるでしょう。
そして、もう一つの可能性がAIです。
AIや3D採寸、デジタルパターン設計などの技術が進化すれば、
注文方法から製造方法まで大きく変わるかもしれません。
大量に同じ服を作って売る時代から、
一人ひとりの体型や好みに合わせて、必要な分だけ作る時代へ。
つまり、アパレルの原点である「個別注文による服づくり」へ回帰する可能性があります。
もしその仕組みが完成すれば、
人々は既製品のサイズや流行に縛られることなく、
自分だけの一着を気軽に注文できるようになるでしょう。
例えば、
・大正時代風のスーツ
・1960年代風アイビールックのジャケット
・最新のストリートファッション
・アニメのキャラクターが着ていた衣装
・1980年代DCブランド風コート
など、思い描いたデザインを
自分の体型に合わせて製造・購入できる時代が来るかもしれません。
夢物語のようにも聞こえますが、
AIの進化を見ていると、案外そう遠い未来ではないような気もします。
既製服が当たり前になったのは、
人類の長い歴史から見れば、ごく最近のことです。
「最新の技術によって、私たちは皮肉にも服づくりの原点へ戻っていく」。
そんな日が来れば、
それこそが「ファストファッションが倒される日」なのかもしれません。