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見積りマケることは、時空を歪めるのに等しい

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プロジェクトマネジャーにとって、工数見積りの圧縮のプレッシャーがかかることはよくあることです。こんなケースを見てみましょう。

あなたは新商品開発のプロジェクトマネジャーです。
ある日、社長に呼びだされ、こう聞かれました。

よくあるシーン

社長 :「あとどれぐらいの期間でできそうだ?」

あなた:「まだ6ヶ月はかかります」

社長 :「何を言ってるんだ!そんな悠長なことは言ってられん。
     3ヶ月でやるんだ!」

あなたにしてみれば、理不尽としか言いようがない要求です。 こんなとき、あなたならどうしますか?

1)泣く泣く従う
2)「無理なものは無理です!」と突っぱねる

どちらの道を選んでも、遅かれ早かれ、あなたはプロジェクトマネジャーではなくなります。

時空は歪められない

泣く泣く従うということは「6ヶ月の見積りを、3ヶ月にマケる」ということです。しかし、どんなに頑張っても、どんなに頑張っても、6ヶ月かかることを3ヶ月で完了させることはむずかしい。見積りをマケるということは、時空を歪めようとすることに等しいのです。

それを無理にやろうとすれば、残業に続く残業、休日出勤が発生します。メンバーは必要なプロセスを省いてでも、なんとか終わらせようとするでしょう。結果、不具合が多発して、プロジェクトは火を噴きます。

かといって、真正面から社長の要求を突っぱねれば、「あいつはビジネスをわかっとらん」と判断されます。実は、社長は競合他社に先んじて、新商品の発表をしなければならないと思っているのです。

第3の道

ここでのポイントは、社長は「見積り」を求めているわけではないということです。社長がほしいのは「どうすれば1ヶ月でできるのか」ということです。

これが理解できれば「第3の道」をとることができます。

あなた:「3ヶ月ということは、何か理由があるのでしょうか?」

社長 :「似た商品をA社が開発しているというウワサがある。
     A社が発表するまえに、うちが発表しなければならない」

あなた:「ということは、発表できる品質になっていて、
     目玉機能が動くようになっていれば最低限OKですね」

社長 :「そうだ。その時点ではすべての機能が載っていなくてもいい。
     発表と商品展示に耐えられる品質にしてくれ」

あなた:「わかりました。機能を絞り込んで、
     まずは目玉機能を操作してもらえる品質にすることに注力しますが、
     できるだけ多くの機能が搭載できるよう努力します。」

経営者や上級マネジャー、または顧客から、見積りの圧縮のプレッシャーがかかることは、プロジェクトマネジャーにとって日常茶飯事です。しかし、どう頑張っても時空を歪めることはできません。

経営者や顧客が「どれぐらいかかるか」を聞くとき、彼らがほしいのは「見積り」ではなく、彼らの目的を果たすための実行可能は「計画」であり、「できるだけ努力するという姿勢」です。相手が求めていないものを渡しても仕方ありません。

プロジェクトマネジャーがとるべき道は、時空を歪めることでも、社長や顧客と戦うことでもありません。機能する「第3の道」を探るのが仕事です。



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