進捗管理、たった一つのコツ
プロセスデザインエージェントの芝本秀徳です。
プロジェクトが遅れたり、失敗すると、たいてい「進捗管理」の方法論の話がでます。「もっと数字で見える化しよう」「進捗会議に上席マネジャーも参加しよう」など、いろいろと方法論が議論されます。
しかし、どんな方法論を使ったとして、「これができていなければ全てムダ」というポイントがひとつあります。きょうは、その「たった一つのポイント」についてです。
■ 文字は「現実」ではない
プロジェクト進捗管理には、さまざまな方法があります。PERT、TOCなどのアプローチ、ガントチャート、WBSなどのツールも用意されています。私はモニタリングシートというツールを使っています。それぞれ、適切に使えば有効なものです。
しかし、どんなに優れたアプローチで、どんなにすぐれたツールを使っていたとしても、そこに現れた進捗率などの数値、報告書の内容は「現実」ではありません。あくまでも紙、電子ファイルに上に書かれた文字でしかないのです。
この「文字」を眺めて進捗管理をしていると勘違いしてはいけないのです。
■ ハコを開ける、開けた状態を保つ
プロジェクトというものは、たくさんのハコが並んでいて、ハコの一つひとつにタスクが入っているようなものです。フタが開いているハコは、プロジェクトマネジャーに状況が「見えている」タスクです。フタが閉まっているハコは、実際の状況が「見えていない」ハコです。
ここでいう「見えている」とは、進捗率を知っているとか、「担当者がそういっていた」ということではありません。現実を知っているかどうかです。
ドキュメントかもしれませんし、ソースコードかもしれません。うごくソフトウェアかもしれません。「現物」を確認し、「現実」を把握しているかどうかが大事なのです。
プロジェクトが遅れるときは、たいていの場合、
「間に合うと聞いていた」
「やってくれていると思っていた」
「ふつう、やるでしょう」
といった「だろう運転」的な言い訳が出てきます。しかし、ハコのフタを開けていなかったのです。「開けてビックリ」とはこのことです。何一つ、現物、現実を把握していないのです。
「だろう」が全てその通りになるのであれば、プロジェクトが遅れることなどありません。この「だろう」こそが、プロジェクトを遅らせる、失敗に導く、もっとも大きな要因なのです。
プロジェクトマネジャーがやるべきことは、文字の情報を鵜呑みにするのではなく、ハコのフタを開いて、文字の情報と「現実」との乖離を把握することなのです。
■ モニタリングとコントロールを意味を考える
多くの組織では、週に一度のペースで進捗会議をしています。しかし、タスクの遅延やトラブルを、週一回の進捗会議ではじめて知ったというのであれば、それは「フタを閉じたままにしている」ということに他なりません。
何もしなければ、フタは閉じたままです。プロジェクトマネジャーの仕事は、このフタをできるだけ早く開けること、そして開けた状態を保つことです。そして何かまずい兆候や、きな臭さがあれば、すぐに是正すること。このことを「モニタリングとコントロール」というのです。
「フタを開けておく」
これができていなければ、どんな方法論を使っても、プロジェクトを成功に導くことなど、到底できません。
方法論は必要です。しかし、方法論を活かすも殺すも、プロジェクトマネジャーのマインド、姿勢にかかっているのです。