ケンブリッジ語録#25 「考える」のは5分が限界~それ以上は"思考停止"していると心得よ~
僕が勤めるコンサルティング会社、ケンブリッジには、厳しいプロジェクトの現場で生まれてきた「語録」がある。
多くのコンサルタントの琴線に触れ、成長を促すカンフル剤になってきた。現場感がみなぎるエネルギッシュな語録を書き留める。
「考える」のは5分が限界
先日、若手コンサルタントAさんが資料を作っていた。
僕が担当するプロジェクトのメンバーではなく、別のプロジェクトのメンバーなので具体的にどんな作業をしているのかは把握していないのだけど、本社の隅っこでかれこれ30分以上パソコンとにらめっこしていたと思う。
あまり怖い顔しているので、「大丈夫?」と声を掛けてみた。
すると、「大丈夫です。どうやって整理しようか考えているんですよね」という答えが帰ってきた。
その瞬間、僕がケンブリッジに入った頃の記憶が鮮明にフラッシュバックしてきた。全く同じやり取りをした記憶があったからだ・・・。
8年前、僕が同じように会議の進め方考えていた時の事・・・。僕のボスであるプロジェクトマネージャーが声を掛けてきた。
PM「怖い顔してパソコンにらんで・・・大丈夫?今どんな状態なの?」
僕「大丈夫です。会議の進め方を考えてました」
PM「うん・・・。何分経ったの?」
僕「30分くらいです」
PM「え?30分も考えてたの?すごい脳体力だな?10分も考えられないでしょ?俺は5分が限界だと思うけど」
と言われて驚いた・・・。
僕「いやいや・・・。PMじゃないんですから、僕みたいに頭の悪いヤツは時間かけてしっかり考えないとダメなんですよ!」と少し自嘲気味に反論するとPMはこんなことを言い出した。
PM「いやそうじゃない。人間の脳みそ自体がそういうものなんだ。連続で考えられる時間はごく短い。5分以上考え続けてると言うことは、"思考停止状態"か、同じことをグルグル考えてる"思考ループ"に入っている可能性が極めて高い」
僕「うーん・・・。そうなんでしょうか・・・?もっと長く考えていることもある気がするんですが・・・」
PM「いいや。今の榊巻さんみたいに、"脳みそだけで考えている"と5分が限界だと思うね」
僕「うーん。そうだとしても、"ここまでしか考えられません!限界です!"なんていい加減なことできませんから!」
PM「それだよ。その考え方自体がおかしい。そんなに時間をかけちゃうのは、"俺はもっとやれるはず"って思い込みとか"頑張ってやりきりたい"って自己中心的な考えが働いているんだよね。そんなものチームとしてみた時になんの役にも立たない。榊巻さんが"時間使って考えたい"って言うのは、エゴ以外何者でもないでしょ?だって時間使った分だけのバリューは出てないんだから、全然チームのためになってないでしょ?5分考えたら、ある意味開き直って、一旦自分の限界と受け止めるべきなんだ。"下手な考え休むに似たり"だ。」
これはガツンときた。確かにその通りだった。
当時は半分くらいしか理解できなかったが、今ではハッキリと分かる。
ビジネスパーソンの思考にはこんな特性があるのだ
- 単に頭だけを使う場合(「ロダンの考える人」の彫刻の様に考えているイメージ)は5分が限界。それ以上の長さだと、思考がグルグルする。または考えているようでも別のことに思考が飛んでいたり集中できていない。
- 放っておくと無制限に時間を使ってしまう。なぜなら、「もっと時間を考えればいいアイディアがでるハズだ」、という幻想を抱いているからだ。
- 5分を思考時間の限界値に設定し、その時点でのアウトプットを、"自分の実力"だと受け入れる。これが出来ないから往生際が悪くなり、ズルズルと時間を使ってしまう。
かと言って、もっと長く思考できる時もある・・・。これは、"アウトプットする"、"インプットする"を上手く組み合わせて考えているからだ。
思考を加速させるためには4つのサイクルを意識するといい
- 頭だけで考えるのではなく、少し考えたら書き出してみる。
- 書き出したら頭の中身が紙の上に表現される。紙に吐き出した分、パンパンだった脳みそに少しスペースが生まれる。
- 書き出したものをもう一度読み返すことで、新たな刺激が脳に加わる。
- 新たな刺激と、新たに生まれたスペースを使うと、また考えられるようになる。
誰かに考えていることを聞いてもらったり、感想や指摘をもらうことでも同じ効果が期待できる。話を聞いて貰った途端に思考が晴れた!なんてこと、経験があると思う。その裏では、こういう原理が働いていたのだ。これを上手く使えると連続的に思考の品質を高めることができる。
これが腹落ちしてから、思考のサイクルが3倍になった
30分の使い方が全く別のものになった。停滞することなくずっとトップギアに入れたまま思考を走らせることができる。
"考える"という作業はとっても難しい。油断するとあっという間に無価値な時間を過ごすことになってしまう。思考を無駄に停滞させない工夫をしなければいつまで経っても「考えているフリ」から抜け出せない。
最近は、「思考を書き出してみて、手が止まったら限界と捉え、新たな刺激を取り入れる」ようにしている。
何にしても、自分なりの考えるルールを決めとかないと思考停止状態になる。あなたはどんな工夫をしている?
「世界で一番やしい会議の教科書」が、日本ファシリテーション協会の推薦書に選ばれました!こちらもご贔屓に。