今日のプレゼンで勝ちに行く姑息?な手段 〜脳に刺激を与えるウンウンの効果〜
上映中のフィルムに清涼飲料水の商品名等を差し込むことで売店の売上が上がったとされるサブリミナル効果の都市伝説を信じている人はもはや少ないだろう。(後に同マーケティング会社の担当者が、Gimmickだったとゲロったとされる)
購買行動への刺激の度合いについての科学的な裏付けには乏しいものの、「脳が反応していること」と「意識している(できている)こと」のギャップについては脳学者による研究が進んでいるらしい。少なくとも、意識しない刺激による脳の反応は好ましいとされる「選好」には影響はあるようだ。
以前もブログで触れた池谷裕二准教授の著書『単純な脳、複雑な「私」』を読んでみた。この本、出身高校での講義録となっており読みやすい。
同著で触れられている引用をさらに原著にあたって読んでみた。カリフォルニア州立大のTomらの「The Role of Overt Head Movement in the Formation of Affect」ではこんな研究の報告をしている。
まず、メーカーによるイヤフォンの商品テストに協力して欲しいと被験者となる120人の学生を集めた。商品テストはエクササイズ用のイヤフォンであり、二つのグループに分けられた被験者は、首を縦に振るグループ(Nodding)と横に振るグループ(Shaking)とされ、首を振りながら音楽を聞き、その後に商品に関するアンケートに答えるというもの。被験者の属性以外に、イヤフォンの特徴や音楽を聞いての印象等5スケールで非常に良いから非常に悪いまでを聞いている。案の定、製品の重さについては、首を縦に振っているNoddingグループのほうが”重い”と感じる解答が多かったとされる。
が、お約束だが、この実験はまったくのカバーストーリーである。
実は、フィジカルな行為と意識しないで使用したペンの選好についての関係に触れている。
アンケートの記入のため、ペンが手渡されていた。このペンは青と濃い赤(burgundy って書いてあるので濃いワインレッドって感じ)の2種類があり、被験者にはどちらか一方が渡されている。アンケートがすべて記入された後に、一度アンケートとペンは回収される。
そして、”メーカーからのプレゼントとして両方のペンをプレゼントします”と被験者に伝え、テーブルに置かれた2種類のペンを取りに行ってもらう。(このとき、テーブルは2つ用意され、2種類のペンは左右が別々に配置された。)
最後に、
「ちなみに、どっちのペンがいい?」
と質問したとのこと。
被験者は、イヤフォンの商品テストに関して意識があり、自分が使用したペンの色についてどこまで意識していたか定かではない。
が、この結果は、首を縦に振ったNoddingグループの約3/4は自分が使用した色のペンのほうがいいと言い、首を横に振ったShakingグループの約3/4は自分が使わなかった色のペンが言いと言ったとされる。
行動が気持ちを変えることは、よく知られているし、精神論でも語られるだろう。が、この結果の面白い点は、フィジカルな動作と意識もしないある選好に一定の関係が示唆されている点にある。意識しているかいないかは別にして、脳は反応しているということらしい。
この時期、来期の予算稟議申請も架橋となってくる。社内や客先でのプレゼンテーションも力が入る。相手をその気にさせる方法の一つにこんなこともありかもしれない(笑)。
「え〜、まず、皆様、首を縦に振ってください。ウンウンです。いいですね〜」
「次に、プレゼンに興味がないかもしれませんが、首を縦に振り続けてください。そうそう、その調子です!」
少々、おふざけになりはしたが、相手にウンウンとさせることは、相手が強く意識するか否かによらず脳に刺激を与える重要な要素の一つだと言えよう。