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ダラダラ書いても評価されない 〜複雑ネットワークを例に〜

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 前々回、実際に受験対策向けゼミにて用意した練習問題の一つを紹介した。

 ・ 大学院二次募集 合否発表の時期 〜チューター担当した留学生も合格しました〜

 我々の社会・生活において、インターネットは、1990年代後半から急速に普及・拡大してきた。現実の社会のネットワークは非常に複雑であるが、インターネットの出現にて複雑ネットワークの特徴でもあるスケールフリー性が注目されるようになってきた。  そこで、この特徴についてインターネットにおけるビジネスの成功要因の一つとしてどのような関係・影響を及ぼしているのか議論しなさい。

 参考図書は、この手のものでは押さえておきたいこの2冊である。一つはアルバート=ラズロ・バラバシ著『新ネットワーク思考』NHK出版、もう一つはマーク・ブキャナン著『複雑な世界、単純な法則』である。両方とも、複雑ネットワークものでは、名著になっている。(あと、ダンカン・ワッツ『スモールワールド・ネットワーク』もあるが、こちらは読んでいない。ごめんなさい。)

 まず、ウンチクから・・・・
 ノードとリンクもしくはエッジ(以下、リンク)の集合がグラフであり、その「繋がり方」を扱う領域がグラフ理論である。ネットワークは、ノートとリンクから構成されるグラフの一つである。これまで、ランダムなネットワークがあるとき、その任意のノードがもつリンク数は、正規分布もしくはポアソン分布と考えられていた。
 しかしながら、インターネットのリンク数の分析からその度数の分布が正規分布でもなくポアソンでもなく、「べき乗分布」に従うことが明らかにされ、他の自然界の現象についても同様にベキ乗分布に従う事象が徐々に観察され、これまでの常識に1ページを刻むこととなった。
 「べき乗分布」の最大の特徴は、1.ピークがなく、2.大多数の少リンクと非常に少ない多リンク、3.フラクタル(自己相似)と言える。

 このべき乗分布のネットワークにおいては、多くのリンクをもつノードの選択が優先される「優先的選択」が生ずる。要するに、アクセスの多いサイトほど、ますますアクセスを生むのである。
 経営学では、「ネットワークの外部性」と指すことが多く、リンクが多いほど1利用者が得られる便益が増すのである。

 ここまで、ウンチクをコネクリ回したが、経営系の大学院入試でここまで記述する必要はない。解答については、「知識」+「(自分の)意見」を論理的に記述すれば、十分加点される。

 まず、この手の論述問題については、「知識」についての採点基準としてキーワードの記載の有無がある。今回のケースであれば、「ネットワークの外部性」が主要な加点キーワードとなるだろう。このキーワードを使用しなくとも、正規分布とも異なる特異なノード(サイトと言ってもいいだろう)が見られ、その利用者はアクセスが多いほど利便性を得ることを順に説明すれば十分加点される。自分の意見として、書き加えるのであれば、事例を挙げて説明するのもよいだろう。例えば、オークションサイトをイメージすれば容易だろう。出品者が多いオークションには閲覧/落札希望者も多くなるだろうし、閲覧/落札希望者が多いオークションには出品者もますます出品することとなるだろうとしてみる。
 加えて、ビジネスにおける「先行者利益」(first mover advantage)の特徴について書き添えればよいだろう。また、サービスの特性について触れて、サービスはサービスの提供者と需要者の共創によって成立すると触れればほぼ完璧だろう。

 インターネットにおいては、少ないリンクしか持たないサイトが多数を占める中非常に多くのリンクを持つサイトがごく少数存在する。この多リンクサイトにおいてのサービス利用者はリンクが多いほどその便益が高まるネットワークの外部性が見られる。そこで、インターネットにおいて早期に参入し新規開拓を進め多くの利用者を集め先行者利益を得ることは、インターネットにおいてはネットワークの外部性をより多いに享受することができ、他社と比較して競争優位性を持つこととなる。

 「ネットワークの外部性」(「先行者利益」はもはや常識の範囲だが)のキーワード以外は、1〜2冊程度、関連する本を読んでおけば、一般常識として自分の意見で書ける。
 決してやってはいけないことは、特定のIT企業のビジネスについて自身が知っていることをダラダラと綴ることである。三面記事ではないので、裏事情をいくら暴露しても、また、自分だけが知っている(であろう)ちょっとした秘密を書き込んでも、ほとんど加点はされないだろう。

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