強みは活かすと同時に繋ぐべき 〜技術で勝って、事業で負けないために〜
聞くところによると、あしたのジョーには、幻のラストがあるらしい。丹下段平がジョーに「試合に負けてケンカに勝った」と語りかけるシーンがあったとのこと。
昨今、東アジアを中心とした諸外国に押され気味のわが国の製造業は、勝っているのか、負けているのか?
先日、経産省の『産業構造審議会 産業競争力部会 報告書』を眺めていると面白い内容があった。先週の段階にて、社内の週ミーティングにて1時間ほど時間をもらうこととして、中堅以上の社員を集めたワークショップ(勉強会)ので、私なりに噛み砕いて紹介した。(ワークショップの内容は、ものづくりとサービス・マネジメントをつなぐ構成とした。)
『技術で勝って、事業で負ける』
製造業の卓越した技術により、製品の市場創成期には大きなシェアを確保するも、製造装置、プロセス、アセンブリそのものまでがモジュール化が加速したことで、あっという間に諸外国に追いつかれてしまうとのこと。報告書では、液晶パネル、DVDプレイヤー等の世界市場のシェアの急落が示されている。確かに、海外へ旅行にいってもホテルのテレビはほとんど韓国系の詠唱テレビと言っても言い過ぎではないと思う。
しかし、全ての製品で負けているわけではないらしい。
デジタルカメラにいたっては、市場シェアは他の製品と比較しても減少は小さく、世界市場にて国内メーカーは、「事業では勝っている」と言えるようだ。報告書では、その要因として、2つを挙げている。
・ 技術の擦り合わせによるブラックボックス化 ・ インターフェースのオープン化
の同時両立がその鍵としている。これまでのものづくり、MOTの議論では、擦り合わせ vs モジュール の構図が中心的になっていた。デジカメでは、レンズやCCDなど個々のキーコンポーネンツは擦り合わせ型の技術にてその性能と品質を高めブラックボックス化すると共に、アプリやLCD、メモリカードなどのI/Fについては積極的なオープン化を受け入れた点にあると説明している。
中小企業の技術力は、決して大手に引けを取るものではない。ただし、今後は、強い技術指向では必ずしも常勝に至には難しい時代であることは確からしい。インターフェースのオープン化は、モノとモノだけに限定されることではなく、広く解釈してしかるべきと考える。モノとサービスを意識したものづくりもその解の一つだと思う。
自社の技術には自身は持つべきであるし、磨き続けるべきである。しかし、自分達の強みを他の強みと組み合わせていく発想も、求められてくると考える。