オルタナティブ・ブログ > No try, no chance >

中小企業診断士がリードするビジネスゲーム。自ら実践したリスキリング(学び直し)の体験談などご紹介いたします。

サービス産業におけるカイゼンって、KKDでいいんでしょうか?

»

 所属研究室を通じて、サービス産業におけるカイゼンのお手伝いをすることがある。大学にて進めるフレームを適用したものである。
 経済産業省『サービス産業におけるイノベーションと生産性向上に向けて』(2007)の指摘の通り、日本におけるサービス産業の生産性は、先進諸外国に比べて低いと指摘される。様々な要因があるとされるが、昨今、サービスを科学するサービスサイエンスの重要性が示唆されている。サービスサイエンスは、SSME:Service Science, Management and Engineering とされるように、より経営工学的アプローチを含むようになってきた。

 実際に実務家の方々とお話をしていいくと、必ずしも製造業と比較してサービス業にIE的なカイゼンフレームの適用困難性があるとは思えない。もう一つ、軸を設けた解釈のほうが、私として感覚的であるが、すっきりする感じがある。

 2009年版中小企業白書が示すように、中小企業における人材教育は、従業員規模が多いほど積極的である。また、中小企業でのOff-JTは、小規模企業相当(20人以下)と大企業相当(301人以上)では、50ポイント弱もの差がみられ、ギャップが最も大きい。また、同白書にて、直近10年間の新卒採用者の在職割合では、従業員規模が小さいほど離職率は高く、約45%の小規模企業相当では、新卒在職率は3割未満となっている。雇用の流動面では、中小企業の多くは、前職も中小企業である。
 また、総務省の「事業所・企業統計調査」を見ると、2006年の数字で第三次産業における企業数では、中小企業が99%を超えており、従業員でも全体の70%弱が中小企業の従業員となっている。
 これらから、事業規模が小さいほど、外部からの教育機会が少なく、社内の独特の文化、KKD(勘と経験と度胸)に基づく恣意的価値観にて、人材教育が進められている傾向が高い可能性があるだろう。これは、サービス産業固有の問題というより、むしろ事業規模に起因するカイゼンそのものの遂行可能性とも考えられないだろうか。

 無論、サービス産業において、サービスマネジメントの観点にて特徴づけられる無形性、消滅性、同時性、不可分性、異質性による従来の製造業的なカイゼンフレームの適合性もあるであろう。(また、第三次産業=サービス産業との解釈も短絡的ではある。)

 サービス産業におけるカイゼンについては、組織の遂行可能性と適用するフレームの適合性の両方を加味した上で、高いカイゼン効果が得られるような助言に努めたいと感じた。また、今後、サービス業により適合性の高いフレームへの期待も高まっていることと思う。
Kaizen

Comment(0)