お客様は、ユーザーなのか? カスタマーなのか?
設計工学の福田収一先生の本を読んでいて、ふと、気づかされた。私たちにとって、お客様は、ユーザーなのだろうか?それとも、カスタマーなのだろうか?
私自信、言語学や文学は、まったくもって疎くて申し訳ない。が、ここで指していることは、英訳するとどうなのか?ということではない。また、ユーザかユーザーかのような、語尾をのばすかのばさないかでもない。
我々が、ビジネスをする上で、お取り引きさせていただく対象となる組織または個人を、どのように位置づけているのか?という点である。
特に、カスタマーについて、少し、整理してみる。
ロングマンの英英辞典によると、
custom : "something that is done by people in a particular society because it is traditional"
となっている。「伝統から、社会にて人々により行われること」であり、いわば、「習慣」といえる。また、少し、語源を調べてみると、「自分のもの」という意味から来ているらしい。
そこで、カスタム【custom】は、”慣れ親しむ自分自身のもの”と解釈できそうだ。
そう考えると、日々使う「カスタマイズ」という言葉も、なんとなくイメージがつく。
customize : "to change something to make it more appropriate for you, or to make it look special or unusual"
”よりふさわしく、もしくは特別/他と異なるように見えるように変えること”であり、”自分自身のものとして慣れ親しめるように変えること”と解釈できそうだ。
自社のお客様を、ユーザーとして位置づけるとする。それは、自社が提供する財やサービスの使用にあたり、提供者が想定/設計した仕様にて使用いただくことを暗に意味するとも解釈できそうだ。しかし、製品仕様における使用範囲内であろうとも、お客様には、様々な使用用途があり、財やサービスの提供者が一様に想定した画一的な使用ではなく、大なり小なりお客様が慣れ親しむように変えている。ボタンやスイッチの擦れによる微妙な変形や歪みも、お客様にとっては愛着と共に使い勝手の良さを生み出していることもある。
業務に使用しているノートPCが壊れることがある。(突然のブルースクリーンやHDDクラッシュは失恋のショック以上らしいが、)保守契約している場合には電話をすると、その日の夕方にはオフィスに来ることもある。お約束如く、部品交換してくださるわけだが、部分的に新品になっていることでうれしくなることもある一方、キーパッド等も交換されるとなんとなくタッチの感触が微妙に異なり、違和感を感じることもある。
お客様は、提供者の思い以上に、その製品やサービスを愛してくださる。そして、ご自身で親しみを持ち、扱いやすく利用しやすいように微に細に、我々提供者が気がつかない点をご自身なりに、有形/無形的に加工していることも少ないないと考える。
多くのお客様は、ご自身でカスタムしているカスタマーなのであろう。