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中国のパクリに見る、中国と日本の危うさ

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中国人は、パクる。もう日本人にとってはおなじみの認識になっているこの事実。それにしてもそこまで、中国人のパクリに対する嫌悪感が強いのはなぜなのか?欧米企業が同じことをやってもこんな反応はないような気がしないでもない。中国人がなぜパクるのかについて、考えてみると中国人と日本人の危うさが見えてくるような気がする。今回はそのことについて書いてみたいと思う。

■ご存知の通り、中国人は知的財産権を理解できない
既に多くの方がご存知だと思うが、中国には、知的財産権を理解できる人が少ない。沿岸部では多少広まってきているものの、まだまだ理解できない人が多く存在することは間違いない。「他人が考えたのと同じ物を作ったり、作り方を真似しても、『物』自体を盗んだのではないのだから何が悪いのか?」ということだそうだ。これは中国の歴史上上古からある庶民の考え方の一つで、これを多少自身への揶揄も含めて「山寨文化」と呼んでいるとのこと。(※参考:Wikipedia)『山寨』とは、こっそりいろいろな物を作れる、人里離れた山の中にある要塞のこと。確かにこれがパクる原因の一つなのであるが、それだけではないということを付け加えておきたいと思う。どちらかというと下記に書くことの方がパクることに影響していると思う。

■中国のパクりは成長意欲の表れ
例えば、私たちが学校の部活動で先輩の様子を見て上手になった経験がある人は多いのではないだろうか?1番上手い人の様子を見てあのようになりたいと思い、真似をした経験。これは、自然なことで何ら責められることではない。そして、この意識は成長したいと思っているからこそ出てくるもの。つまり、中国人の一部があの日本製のようはものを創れるようになりたいと思うからこそ、似たようなものを作るのだと思う。日本も昔はそうだった。アメリカなどの製品を真似ることで今では世界一の技術力を獲得しているのだから。だから、中国のこの成長したいと思いパクることは誰にも責められるべきものではないと思っている。逆に、それだけの感情を日本製品は中国人に対して与えているということを知った方が良いのかもしれない。魅力を感じない製品を真似するなんてことはしないのだから。これは売れる!これはいい!と思うからこそなのである。中国はまだまだ成長出来る分野が幅広くあるし、まだまだ技術力も高くない。だからこそ、追いつけ追い越せの精神で頑張っている証拠でもあるのだ。

■しかし、単純に真似るだけでは両国にとって損失
先日、フジテレビの番組内で『東京ラブストーリー』の劇場版が無許可で上演されているということが放送されていた。ストーリーも出演者の名前も全くオリジナルと同じということで面白おかしく取り上げていた。このようなソフトがコピーされることも非常に多いが、このような完全コピーというものは中国にとって良い結果をもたらさないと私は思う。日本も海外製品を真似をしてきたことは確かだが、例えばアメリカ製品を日本人好みにして、もっと使いやすく、もっと品質良くしてきた経緯がある。真似しながらももっと良いものにしていくことで技術・ノウハウを習得し発展させていった。しかし、この完全コピーにはその意図が全く感じられない。真似をしてその本質を習得しようとする意思・成長意欲が全く感じられない。こんなことをやっていては中国文化の発展はないとすら思える。ドラマの構成や台詞などを研究し、なぜ人を惹きつけるのかを考えることで成長していくはずなのにそのままの完全コピーなんて中国にとって何の意味もない。私はここに問題があるのだと思う。

中国人には、知的財産権という考え方が乏しいのは確か。しかし、いつまでもこんなことをしていたのでは中国企業の実力は一向に上がっていかないのではないだろうか?このようなことをやっていたら、いつまでも中国製品は低品質と揶揄されることになってしまう。中国は考え方を変える必要に迫られていると思う。いくら外資系企業と合弁会社を作ったところで技術・ノウハウを習得し発展させることが出来なければ何の意味もないのだから。この完全コピーや悪意あるものに関しては日本としても徹底的に訴えていくべきだと思う。

■パクりに敏感なのは成長していない証拠
それにしても、なぜ日本人は中国のパクりにここまで敏感に反応するのだろうか?これには、経済の低成長に原因があるのではないかと思っている。今や日本は、上ばかりを見ていればよい時代から、下を気にするようになったということ。部活動の例でいえば、それまで順調に上達していたものの、ある一定のレベルまで到達するとあまり伸びなくなるのと同じだ。日本は世界第2位の経済大国にまで上り詰め、同時に日本経済は成長しなくなった。そんな中、すごい勢いで伸びてくる中国が現れる。気になるのは当たり前だ。成長が止まっている以上、自分たちの技術やノウハウを盗まれることは死活問題となる。後輩が自分の技術を盗んでレギュラーの座を自分から奪い去るのではないかと感じる。その後輩とは口も利きたくなくなるのも不思議ではない。心が広い人なら、それもしょうがないと思うだろうけど、やはり生活が懸かってくる以上そんな人は少ない。日本も例外ではなく、心の奥底では、中国には追い越されたくないと思っている。GDPでは追い越されたけど、個人の収入はまだまだ日本の方が高いなどと言って自分自身を安心させている。そして、中国の不動産バブルがはじけるのを心待ちにしている。そんな国民感情を察した日本の報道は、中国がどれだけ品がないのかを強調するような報道を展開し、視聴者に安心感を与えて視聴率を稼ぎだす。中国のコピー商品事例を紹介し、中国人をバカにすることで自分たちの立場がまだ安泰だと確かめ合うのだ。

もし、今日本の経済が好調なのであればこんな報道のされ方もされなかったはず。もし、日本の電化製品が世界でトップであることを世界中の人が認めているのであれば、中国のメーカーが似たような電化製品を開発したというニュースは日本にとっては誇りを持って聞けるニュースになっているはずだ。

■不安の心から成長はない
下ばかりを見て、上を見ない。こんな状態で成長するとは思えない。人を馬鹿にすることで得られるものは何もない。むしろ、マイナス。自分自身をコントロールして、前に進んでいかなければならない。中国人をバカにするような報道はやめて欲しいと心から思う。また、無駄に日本を持ち上げる報道もいらない。そして、これら報道に惑わされずにいたい。

最後に宋文洲さんのツイッターの言葉

『真似して創造していく者が強くなり、真似だけの者が弱くなり、真似も拒否するものが消える。著作権侵害は当然許されないが、パクリというネタで小さくなっていく日本はもったいない。』







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