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ペニーオークションの闇、あなたの入札は一人相撲な可能性

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皆さんは「ペニーオークション」というものをご存じでしょうか? わたしは知りませんでした。「どうせエロいもんを扱うオークションか何かだろ」だなんて思っていたのですが、仕組みが分かってくると、「あれ……これ何かおかしくね?」という思いを抱くようになったのでここにまとめておきたいと思います。

●ペニーオークションって何?
まず、ペニーオークションがどんなものかご存じない方のために、簡単にシステムを紹介しておきます。

・運営者が商品を出品し、1円や5円、あるいは0円といった低価格からオークションを開始
・参加者は入札する「たび」に入札手数料として100円程度を支払う
・入札ごとに数円から数十円商品価格が上がる
・残り時間が0秒の時点で最高価格をつけた方が落札確定
・落札者は、落札金額と配送手数料を支払い商品を受け取る

ポイントとしては、出品者はサイト運営者であり、終了まで時間が一般的なオークションと比べて短く、入札がトークン制であるという点です。入札のたびに一定金額が必要だが、うまくいけば非常に低価格で落札できる、というのがペニーオークションです。

もう少し感覚的に理解するため、某サイトから引用します(某サイトと出典を明記しない理由については後述します)。

・出品商品は「ニンテンドーDSi LL(新品価格20,000円程度)」で0円スタート。
・1回の入札に75円の手数料がかかるとします。
・1回の入札で上がる価格は15円で固定とします。
・参加者(DSiが安く欲しい方)が30人いたとします。

上記の条件で、30人が一人平均20回入札を行った場合の手数料合計額は
 30(人)×20(回)×75(円)=45,000円

上記の条件で、最終落札価格は
 30(人)×20(回)×15(円)=9,000円

45,000円(手数料) + 9,000円(落札価格) - 20,000円(仕入価格) = 34,000円(利益)

運営者はDSiを1台出品するだけで、34,000円もの利益を得ることが出来ます。

落札者は1,500円(手数料)+9,000円(落札価格)=10,500円(+配送手数料)で、
最新DSiを半値以下(52%OFF)でゲット!

落札に失敗した人は、1,500円の入札手数料が出費となってしまいますが、参加者が増えれば増えるほど利益も増加しますので、今の人気商品などを見極めて予測される落札価格や参加人数に応じてタイミングよく出品できるセンスがあれば、多くの利益を見込めるシステムとなるでしょう。

ここまでを読むと、「あれ? ペニーオークションってユーザーにも運営者にもやさしいんじゃない?」と思われるかもしれません。実際わたしも3日くらい前までそう考えていて、ペニーオークションのシステムを作ろうかと思っていたくらいです。

しかし、その前に一度実際に試してみようと思い、国内の某ペニーオークションサイトに登録し、入札をしてみました。

●これ……機械入札じゃね……?
実際に某ペニーオークションサイトに参加してみると、違和感を覚えるまでに時間はそう掛かりませんでした。何度やってもほかのユーザーが入札してくるのです。もちろん、市場価格と比べればはるかに低価格なので、多くのユーザーが興味を示している可能性は否定できませんが、明らかに参加者が少ないと思われる時間帯で参戦しても、まったく落札できませんでした。

入札履歴が直近数件しか表示されず、かつ、各ユーザーの情報がまったく見えないようになっているので、実態はつかみにくいのですが、期待値を考えても不思議な入札があったりして、どうにも腑に落ちません。

運営者からすれば、入札があればあるほど望ましいシステムであるペニーオークション。逆に言えば、サクラ入札、内部入札、機械入札など呼ばれ方はさまざまですが、ユーザーの入札に対して、運営側が入札を行う処理を加えれば、何とも腹黒いシステムができあがります。

そんなことをTwitterでつぶやいていると、樋口さん(@osamuh)から以下のような内容を教えていただきました。

デファクトスタンダード的なスクリプトにはサクラ機能が付いてるという話を見たことあります RT @makeplex: ベニーオークションってユーザーが入札したら自動で入札する処理書けば、運営側のやりたい放題なような……まぁそんな悪徳業者は……いないか……less than a minute ago via Fastweet 2K

あぁ…やはりね……と思っていたら、樋口さんから追い打ちを掛けるような以下のツイートが。

上記URLをご覧いただければ一目瞭然(りょうぜん)ですが、スペインの業者が運営していると思われるこのサイトでは、ペニーオークションを立ち上げるためのシステムがフルソースコード付きで販売されていました。ご丁寧に日本語バージョンというものも用意されており、価格は299ユーロからとなっています。

もちろん、こうしたシステムのコードを販売することがまずいわけではありません。うまく使ってTime to Marketを短縮している運営者も少なくないでしょう。ただ、特徴の1つとして挙げられている「Botusers」は、今回疑問に思っていた運営側の自動入札を可能にする機能と推察されます。これがそのまま使われていれば、非常に悪質です。

よく見ると、このコードを用いて生成される画面サンプルは、国内でよく見かけるペニーオークションサイトとよく似た部分が多く見られます。恐らく、樋口さんに教えていただいたサイトは、氷山の一角であり、こうしたアングラ的なサイトはまだまだ数多くあるのでしょう。
Timthumbphp
これを踏まえてペニーオークションについて調べると、予想通り、そんな感じのことを伝えるサイトもありました。上で引用したニンテンドーDSi LLの例は、そのサイトから引用したものです。同サイトでは、このほかにも参考になる情報や、危険なペニーオークションサイトの情報がまとめられています。ちなみに、わたしが試したペニーオークションサイトは、詐欺報告が寄せられており、少し納得した次第です。

まとめると、ペニーオークションは魅力的なシステムですが、悪質な業者も少なくないようです。外から見分けるのはなかなか困難ですので、ご利用の際は少なからず注意されることをお勧めします。

なお、今回わたしが試したペニーオークションサイトについては、恐らく上述のコードをベースにしていると想像されます。Botusersの機能について、質問状を送ってみたいと思いますので、続報があるようならまたお知らせします。

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