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Editors Hacks:メールを捨てて、dropboxでも見ろ

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 前回、編集プロセスの移り変わりについて述べた。今回は、バージョン管理システムを用いた第4世代は、チームによるリアルタイムチームエディットを行う第5世代の編集プロセス、および旧世代の編集プロセスのデメリットを解説していきたい。

 実際には編集作業は広義に使われているため、編集プロセスというものを1つにまとめてしまうことは正確には適切ではない。取材したものを記事にするのと、著者からの原稿をさらに質の高いものにしていくというのは本来異なるプロセスを持つからだ。ところが、弊社の場合だと、記者と編集と呼ばれるそれぞれの職種が「編集記者」として一緒くたにされている。このため、両方の特性を理解していく必要があるのだが、ここでは後者、つまり「編集」のプロセスについて述べる。

 編集のフローを可視化すると、著者とのやり取りというものが頻繁に発生することになる。その間、関係部署などとのやり取りも生ずるが、これは著者とのやり取りとの割合からすれば誤差レベルである。そしてこれまで述べてきたように、そのやり取りの方法が主に第3世代のメールで行われているという点が今まさに変わろうとしている。

 メールでのやり取りのうっとうしさについては、いまさら語るまでもないだろう。スレッド表示に非対応なメールクライアントなんか使っていると、気の遠くなるようなやり取りが続いてしまう。そしてそのたびにメールクライアントへの切り替えを余儀なくされるのである。アプリケーションを切り替えるというのはわたしのようなぐうたら者からすれば、極力避けて通りたい道なのである。

 これが第4世代のバージョン管理システムを用いたものに変わるとどうなるか。1つのリポジトリを作成し、原稿はそこに配置、関係者はそこから チェックアウトし、編集し、コミットすることで、無駄な時間を大きく減らすことができる。ところが問題は、バージョン管理システムを扱うためのコマンド群を新たに覚える必要があることだ。すんなりと受け入れやすい20代のWeb系記者が多い一方で、わたしの知る範囲の経験則では、35歳以上の編集者はこのシステム導入を嫌がる傾向がある。

 ここで、話を少し変え、「プログラマー35歳定年説」について、最近面白い見解を耳にした。これは、わたしがこの業界で胸襟開いて話をする数少ない人物で、かつ尊敬する人物の1人でもある日経BP社の矢崎茂明記者との食事の際に出た話だが、まとめると、「人間、35歳を過ぎると、それまでに蓄積したスキルセットだけで生きていくもの」 であるという説である。これを聞いて35歳に迫るわたしはなるほどと思った。そう考えれば、編集プロセスの移り変わりがここまでゆっくりだったのも、周期的なものが絡んでいたためだと考えられるからである。そんな意味で、現在30代前半のわたしとしては、第4世代への編集プロセスを強く支持することが1つのアイデンティティーなのかもしれないと考えるに至った。

 ちなみに、第5世代のリアルタイムチームエディット。これには大きく2つ考え方があり、GUI画面そのものを共通化、つまり全員が1つのデスクトップを利用するか(仮想デスクトップ画面である程度スペースは確保できるだろう)、エディタを開いているプロセスのセッション情報だけをフックしておいて、必要なときにフォーカスするようなものが考えられる。前者は複数のリモートデスクトップ接続や、FirefoxのアドオンであるMockingbirdのようなもので実現されるだろうし、後者は、Mozilla Labが開発している「Bespin」などのようなインタフェースが支持されるだろう。個人的には、Bespinが日本語入力に対応し、チームエディット機能が追加された時点で、これらを用いた編集プロセスを取り入れる予定である。校正スクリプトなどとの相性もよさそうなので、過去の資産も生かすことができるだろう。

 それ以前の第4世代については、dropboxのようなものが現時点での最良の選択なのではないかと考える。著者ごとに共有フォルダを設定し、必要に応じてイラストレーターなどもグルーピングしながら、情報を共有する。変更履歴で相手の動きも可視化される。セキュリティや個人情報保護の観点からそうしたファイルを置くことをあらかじめ禁止しておけば、一種のバージョン管理システムとしてそれなりに高度なことができる。

 実際、わたしの抱えているライターとイラストレーターは、dropboxだけを使ってやりとりしている連載もある。ライターが簡単な概要を書いたものをメモとして残し、それを読んだイラストレーターがイメージを形にしていく、締め切りはあるが、かなり非同期かつ効率的に仕事が進んでいるとわたしは感じている。懸念されるのはIDやパスワードの漏えいではあるが、適切に運用されたそれらが万が一破られれば、未発表の原稿を目にすることができる。ただし、個人情報はそもそも置かれていない上、接続したIPアドレスはチェックされる。そこまでして必要な情報かといえば、そこには疑問が残るだろう。パスワードさえ定期的に変更することを明言しておけば、少なくとも宅ファイル便のようなサービスを安易に使うよりは安全であろう。

 ということで、新世代の編集者はdropboxを使った編集作業を体感してみてはどうか。相手の同意も必要だが、わたしの周りでこのプロセスを従来より苦痛だと感じる人には出会ったことがない。OS環境などによっては無理なこともあるだろうが、そうした場合にはじめてメールなどを考える程度でよいのではないか。dropboxのShare機能はエディターズ・ハイのためのベースとなるだろう。

 インフラ部分である編集プロセスについてあらかた述べたところで、いよいよ本題の編集技法に踏み込んで行きたい。記者と編集という職種は作業内容がそれぞれ異なることは上述の通りだが、原稿のタイプにも幾つかの型が存在する。そのため、まずは俗に「リリース起こし」と呼ばれるニュースタイプの記事についてその技法を紹介していこう。Happy Editing!

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