Web上で実名を出すこと
というわけで前回予告した通り「Web上で実名を出すこと」について書いてみます。前回の私のオルタナブログ初投稿記事をご覧いただいていない方のために前提を書いておきますと、取材記事を除いて、Web上に実名と顔写真を出すのは、このオルタナブログが私にとっては初めてです。ご存知の通り、オルタナブログは実名と顔写真を出すことが執筆の条件になっており、今回オルタナブログで書こうかどうかを考える際に「実名を出したくないから(出せないから)オルタナブログでは書かない」というのも私にとってはとりえた選択肢でした。でも結局、関係者とも話をした上でこうして実名と顔写真を出しています。どういう思いでそこに至ったのか、後々自分で忘れた時にためにも(笑)、メモっておこうと思います。
「実名と顔写真を出すかどうか」という判断を、ここでは以下の2つに分けて考えてみたいと思います。
1.実名と顔写真を出すのに問題のない記事を書けるか?
2.実名と顔写真を出すことを周囲(特に所属企業・団体)が許可しているか?
まず1.について。今回、私はこの点についてほとんど悩みませんでした。
以前、とあるブロガーの方から「大事なのは実名を出すかどうかではなく、記事の内容に責任を持つこと。記事の内容にコミットしていれば、実名かどうかはさほど問題ではない」と言われ、「確かにそうだな」と思ったことがありました。そして、それまではあまり深く考えることなく何となくブログを書いていましたが、その話を聞いて以来「この記事に自分の名前を添えて世に出すことはできるか?」というのを、記事をUPする際に必ず自問自答してきました。オルタナブログに移転してくる前のブログには実名こそ出していませんでしたが、その内容にはコミットしていますし、だからこそ、オルタナブログを始める際に、前のブログからタイトル「若手コンサルタントの眼」も変えませんでした。(ググっていただければ、私の前のブログが出てきますし、それを書いたのが私であることも今となってはわかってしまいますが、それでも特段問題ありません。※前ブログ運営事務局の都合により、5月末で前ブログは消滅します。)
以前、前ブログを始める際に「記事の内容に責任を持とう」「記事の内容にコミットしよう」と強く意識した時点で、1.は私にとっては問題ではなくなったんですね。なので今回、この点について悩むことはありませんでした。
次に2.について。結論から書けば、私が今こうしていることからも明らかなように、会社を含む私の周りの人から「実名を出すな」とは言われなかったのですが、それに関連して、先日、某社の経営陣の一人とやり取りした話を以下に記述します。
私「社員が会社に断ることなく、Web上で個人ないしは組織が特定できる形で何か言うのってどう思います?というか、誰が書いたかはわかんないんですが、こんな記事見つけました。誰かはわかんないですけど、御社の社員が書いたものだと思うのですが」
経「おー、思いっきりうちの社名出てるね。初めて見たよ。もちろん守秘義務に触れるようなことを外に出すのは論外だけど、この記事みたいに、そうでない範囲で会社の話をするのはいいんじゃない?というか社員に『あれ書くな』『ここに投稿しちゃダメ』とか言うこと自体、今の時代にそぐわないと思うんだけど。会社としてコントロールしようという考え方がもはやナンセンスだと思うよ。ツイッターとかSNSとか、いろいろあるでしょ?」
※経営陣の話はニュアンスをとどめつつ改変しています。
この話をした時は「そんなもんかな」くらいにしか思わなかったのですが、後になって、この話って割と本質かなって思ったんです。「TwitterとかSNSとか、個人がいろいろ発信できる場がある以上、そこを『ダメ!』と言うこと自体に無理がある。これからWeb上にそういう個が発信できる場がますます増えていくことを考えると、余計に。」
また、今月の上旬、こんなニュースがありました。
上の話に照らし合わせると、この高校がしていることは真逆ですよね。人それぞれ感じ方はあるでしょうが、私は「なんと時代錯誤な!」と思ってしまいました。教育の観点から考えても「Twitterやmixiを使うな」とするよりも、これからの時代、Twitterやmixi等のソーシャルメディアが避けて通ることができないものであることを前提として、その"使い方"をケアするのが正しいやり方なんじゃないかと思うんです。「使う・使わない」に、もはや議論の余地はなく、使われることは前提なんじゃないかと。
この高校としては「生徒が在学中にmixi等でトラブルを起こすことを避けたい」という思いなのでしょうが、事なかれ主義もここまで来たか、という気がします。生徒が高校を卒業して、その時点で初めてmixiを使い始めた場合、他校を卒業した生徒は既に経験しているようなmixiの使い方を彼らは知らないわけで、同年代の子達と比べてギャップがあるが故に、mixiの中の空気を読めず、場合によってはそこで大なり小なりトラブルになることもありえるのではないでしょうか?またトラブルにならないにしても、“高校が彼らを抑制していたせいで”「ごめん、mixiとか使い方わかんないんだよねー」と友達と会話せざるを得ない状況に追い込まれてしまうことは問題ないのでしょうか?そもそもITリテラシーを学校で教えることが可能なのか、という話は別問題としてあるでしょうが、いずれにしても「卒業後のことは知りません」と言わんばかりの、生徒のことよりも自分たちのことを考えているように思えてしまう、この高校の姿勢は残念ですね。
話が逸れてしまったので元に戻します(苦笑)。未だ会社としてWeb上で実名を出すことを許可していないところは多いと思いますが、今後、Web上で個が発信できるチャネルが増えていくにつれて、そのスタンスにはやがて無理が生じてくるのでは、と思います。であれば、「実名を出すな」という形でリスクをヘッジするのではなく、社員が実名を出しうることを前提として「実名を出すならこういうところに注意してね」という形で注意を喚起する、その方がより現実的な気がするんですよね。
私は幸い、そういうスタンスの会社で働かせていただいているので、今回諸々注意した上で、こうして実名でブログを書かせていただくこととなりました。
最後に。私の思いとして「実名を出すことが、リターンよりリスクを生む社会であってほしくない」というのが強くあります。確かに今の世の中、実名を出すことで生まれるリスクはあると思います。リスクはゼロではないでしょう。でもそのリスクを覚悟して勇気を持って実名を出した人が、そうしたからこそ得られるリターンってあると思うんですね。私は今日実名を出したばかりなので、それが具体的に何かはまだわかっていませんが。「リスクを覚悟して勇気を出した人が、ただリスクにまみれるような社会であってほしくない。勇気を出したのであれば、それ相応のリターンを得られる場であってほしい」、その思いが間違っていないことを検証するためにも、今回自らこうして実名を出してみました。具体的にビジネスになる、とかそういうことだけを望んでいるわけではありません。オルタナブログを始めたことで、いろんな“楽しいこと”が起きたらいいなって思っています。
※思いがけずもこんな長文になってしまいました。普段はもっとコンパクトな記事を書きますので、今後ともよろしくお願いいたします。