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デジタルとアナログの間を行ったり来たり

飛び込み首狩り族

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 かつて会社にいたとき、ヘッドハンターからの電話に出たことを思い出した。まだこういう種族はいるのだろうか。

 外線がかかってきたので、たまたま電話を取った。すると相手はあまり身元を明かすことなくすぐに「英語で話していいか」と聞いてきた。まあ(そんな人ならどうでも)いいけど、と「go ahead」と言うとずんずん話を進めてきた。

 いわく、かつてこの会社に仕事を依頼したことがあり、その時に担当してくれたエンジニアにまた依頼したい。ただ一度帰国してしまったので手元に詳しい資料がない。記憶しているその担当者は30代の男性で、(当時花形だった)○○や○○の技術に詳しく……と話が続く。

 当時私は30代ではなかったし、男性にもあてはまらず(これは今でも変わらない)、「あはー。んふー」と適当に相づちしながら話を聞いた。男性と限定しているところが少し癪(しゃく)だったが、正直で分かりやすいと思った。

 実際にそういうプロファイルに当てはまる人はいなくもないだろうが、肝心な過去のプロジェクト詳細は触れようとしないことからヘッドハンターだろうなと確信した。

「……ということで、誰だか分からないだろうか」
「そういうエンジニアをお探しなわけですね。お待ちください」

 電話を保留して直属の上司の席まで少し歩いた。

「あのー。システムエンジニアをお探しのヘッドハンターらしき方からお電話です。いちおう30代男性とか、求めるエンジニアの要件定義もあるようです」

 すると上司は「えー」と渋い顔をした。「しょうがないな」という顔をして受話器に手を伸ばす時、私は「あ、それから会話は英語ご希望だそうです」と付け加えた。上司はさらに肩を落としながら電話に出た。

「あー、もしもし。日本語で話しますけどいいですね。そういう話はうちの部長と交渉してください。名前は××といいます。いまはいませんが、今度はそちらに直接お願いします」

 後から同僚などにそのいきさつを話したら「次は自動応答を用意しておきたいね」と提案する人がいた。「プログラマをお探しの方は1#、システムエンジニアをお探しの方は2#……」と長々と選択をさせておきながら最終的には社長室につなぐとか。

 ほかにも対処法をめぐって意外と盛り上がった。しかしいまでもそういう飛び込みヘッドハンターはいるのだろうか。いたとしたら、今度はもう少しウィットに富む対処法はないだろうかと想像をめぐらせてみたりする。もちろん、仕事に支障を与えない程度に。

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