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「Xacti(ザクティ)」のCMが優れている5つのポイント- 広告考察

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ここ数日、SANYOの「Xacti(ザクティ)」のTVCMを見かける。
特にビデオカメラを買う気は無いのだけれど、何故か印象に残っているので少し考えてみた。

一度CMをご覧いただき、下記に挙げたポイント以外にも見落としている点があれば是非
教えてほしい。

※三洋電機「Xacti」のYouTubeオフィシャルチャンネルより
http://www.youtube.com/user/XactiChannel

■このCMが優れている5つのポイント

  1. :冒頭にいきなり水中に潜る音があり、他のことをしていても振り向いてしまう。
    結構ウチではテレビを付けっぱなしにすることがあるのだけれど、このCMを「よく見かける」と感じるのは、単純にこの音でTVを見てしまうからかもしれない。このCMは「音の勝利」と言っても過言では無いと思う。
     
  2. 演出:夏。晴れた空の下に広がる透き通った海。水着の女の子。そして、「水中を撮影できるよ」という明確な使用シーン。それが臨場感を伴って伝わる。Simple is best.
    機能説明だけのCMや、良く分からんイメージだけのCMは要らんのです。
     
  3. 高画質「このCMはXactiで撮影しています。」「フルハイビジョン」というメッセージが
    入っており、高画質であることをCMが証明している。他にも同じような訴求をしていた
    デジカメがあったが、まだ少ないのでしばらくはいい訴求方法になるだろう。それにしても海がきれいだ。
     
  4. モデル:長谷川潤さんのことは全然知らないのだけれど、どうやら若い女性には人気らしい。この人の表情が、本当に楽しそうに遊んでいるのでとても素敵。海に行きたくなる。(メイキングを見ると、仲の良い女性カメラマンと一緒に故郷のハワイで撮影していたようなのでそれが大きいのかもしれない)
     
  5. コピー:キャッチコピーで「Anytime Anywhere」と言っているのだから、他にも撮っているんだろうなと思ったら、案の定、公式サイトには沢山の動画があった。このキャッチコピー自体はそんなに印象には残らないので、あんまり評価しない人もいるだろう。ただ、このCMではそれでいいのかもしれない。悪目立ちするコピーなんて必要ない。商品自体に訴求力があり、それを上手く伝えるストーリーがあり、その一部分がとてもよく切り抜かれている。

なお、このCMの効果かは分からないが、Amazonのビデオカメラのベストセラー で見ると、2010年7月19日23:00時点で1位である。

■ペルソナは「20代後半~30代、友達同士で撮影したい女性」

このブログを書くにあたり、Xactiの公式サイトなどを見ていて気付いたのは、
「メインターゲットは女性なんだな」ということ。CM以外に、以下のような動画もあった。再生回数からすると、あまり見られていないようではあるが。

・読者モデルが【Xacti】を体験!ブログ活用法を大討論!~その1~
・ベッキー・クルーエル 東京ガールズコレクションレポート

CMに出演しているモデルがまさにターゲット像だということに気付いても良かったのだけど、彼女を撮る彼氏(旦那)目線でCMを見てしまっていたので、「男性が買う」という先入観があった。実際、セカンドターゲットはそこなのかもしれない。Twitterで検索してみると「嫁を満足させるために買った」とか言ってる人も居たし。

ただ、恐らくはこの商品の市場を拡大するために、女性向けにプロモーションをするという戦略に至ったのだろう。CMで紹介されている製品は約3~4万円のようだが、Amazonで見ると別のモデルで約1万5千円のものもある。ビデオカメラを買うきっかけとしては手頃な価格設定だ。また、そこでのコメントを見ると、この製品の特徴が見えてくる。バッテリーの持ち時間に難があり、機能も絞られているようだが、それで十分だという人向けなのだ。

■つまらないCMが多い

今回のブログを書くきっかけは、Twitterで見かけた下記のTweetだった。

@sekihashi
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最近、いいCMは何ですかと質問されることが多い。で、続けて50本のCMを見
た。うち、30本はタレントあり。20本はなし。そのほとんどが、アイディアがない。
ただ、タレントがでて、説明してるだけ。これでは、何の役にも立たない。なげか
わしき、昨今のCM。
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このTweetをした関橋英作さんという方は、ハーゲンダッツやキットカットのブランディングを担当されていた方のようである。「ネットにはクリエイティブが足りない」とも仰っていて、是非一度お話してみたい。

昨今の厳しい経済状況と、WEB広告による広告効果の可視化によって、一番評価しやすい売上に目が行くのは仕方のないこと。クライアントからは「そのプロモーションで幾らうちの商品が売れるの?」なんて言われたりして。そうすると販促に近いCMや広告ばかりになるということになるのも、仕方ないことかもしれない。ただ、それで長期的に見たときにはどうなるか。市場が活性化するかどうか。

今回取り上げたXactiのCMは、単なる販売促進だけでなく、どういうストーリーでその商品が使われているのかがとてもよく分かる広告だった。この商品にどういう「価値」があるかが伝わってくる。海に行って使いたくなる。見たときに「これはいいCMだなぁ」とTwitterでつぶやいてしまった。製品自体がとても特徴的だということもあるが、それを最大限に活かせているCMなんじゃないかなと思う。…誉めすぎかな。

なんだか優等生的なCM紹介になってしまったのだけれど、確かに、最近心を動かされるような「衝撃」を受けるCMって非常に少なくなっていると思う。KDDIのCMとか凄い好きだったんだけどなぁ。挑戦的で。

※追記
関橋さんからコメントいただきました。ありがとうございます!
XactiのCMの良さは、「リアリティ」。どこでも使えることを、いちばん誇張された海中を見せることで伝えています。欲を言えば、もっと下手に撮影したほうがいい。それが、「リアリティ」。

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