集団安保と二分された新聞報道が作った神話
確かに 日経、産経、読売新聞(集団安保賛成派)は この手の記事が社会面にのり・・・一方朝日、毎日、東京新聞(反対派)では 一面(政治面)にのると言う 報道姿勢の差は世界観が全く異なりますね。
その日の出来事を 切り取って それを記号として読んで物語を作る・・・・それを繰り返せば 現代社会の神話(人々が無意識に信じ、価値判断に使う価値基準)が出来上がります。
日本のマスメディア(新聞+系列テレビ)が作り上げた二つの世界観=神話は 今後の日本にどんな影響を与えるのでしょうか?
<出所 http://d.hatena.ne.jp/kodomo-hou21/20150513>
同じ現象を 記号論と神話の立場から フランスのジャン・ボードリヤールは 1991年の湾岸戦争を題材に取り上げています。
曰く、自由世界が理解しているような・・・「湾岸戦争はなかった」と・・・・
<出所アマゾン >
集団安保法制(平和安全法制)は2015年9月19日に成立しました。面白かったのは戦後初めてマスメディアの論調が賛成派(平和安全のための法律と主張)と反対派(戦争法制と主張)に明確に二分され、報道た点でしょう。戦争法案と言った反対の論調を報じたのは朝日、毎日、東京新聞でした。一方賛成派論調は産経、読売、日経でした。
この二つのマスコミの提示する報道を読めば、一面で正に60年安保闘争が再現されたかのように大変な事件と報じる朝日、毎日などと社会面を中心に社会の一側面として反対運動を報じる読売、産経、日経などとは提示された世界観が全く違いました。
反対派の新聞を読めば「世界を揺るがす大変な反対運動がおこった」となり、賛成派の新聞を読めば「国会で多少の混乱は起こったけれども法案は無事通過した」「西部戦線異状なし」となります。
このような社会現象をフランスの社会学者ロラン・バルトは現代の神話とよび、都会の生活は記号の読みの過程により神話を作っているのだと喝破しました。集団的自衛権反対デモを記号として読めば「2015年の9月、日本社会は大揺れが起こり、東日本大震災並みに震撼した」となります。一方賛成派は「多少の混乱があったけれども粛々と法案は通過し、様々なデモにみられる民主主義が更に広がった」と言う神話が出来上がりました。共に正に現代社会の神話です。
実際、2015年の9月には様々な事が起こったのですが、その中で集団的自衛権の賛否の視点からのみ社会の一面だけを切り取って記号化し、物語を作る(現代の神話を作る)過程を見るのはとっても面白かったです。
■ ジャン・ボードリヤール 「湾岸戦争はなかった」
フランスの社会学者ジャン・ボードリヤールは1991年の湾岸戦争がテレビで中継され、ワールドトレードセンターのテロが何度も報道されていく様を見て「これは現代の神話であり、実際の湾岸戦争など無かったに等しい」と述べています。つまり実際に起こった出来事と神話として人がっていくイメージとの間に大きな乖離がある、人々はそれに無意識に動かされている(これは危険だ)と言った主張です。その神話がその後のアメリカ社会、世界を動かし、歴史を変えていくことになりました。CMなどを現代の神話と呼んでいる彼に言わせれば「湾岸戦争の報道も集団安保事件の報道もモロゾフが作りあげたバレンタインデー神話=女性が男性にプレゼントを贈る日の浸透に似た様なもの」と言う話になるのでしょう。
■ 賛成派新聞、反対派新聞と神話
しかし20代の新聞購読率が10%台とも20%台とも言われる中、集団安保神話が一体、どこまで強い影響力を持ち、歴史=政治を動かすのかは判りません。
それともインターネットの中でそれぞれが閉じた世界を作り、自らの神話を信じる世界が出来上がるのでしょうか。それとも集団的自衛権を巡る対立は起こらなかったのでしょうか?