スイス腕時計業界とアップルウオッチの関係は代替財より補完財
ファッションとして評価されるアップルウオッチ 眺めるスイス勢
<出所:9to5Mac>
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<出所:オメガ>
IOTの時代の特長はスマートデバイスなどの技術革新が各アナログ業界を根こそぎ創造的に破壊する時代(スマートフォンや電子書籍など)からアナログの魅力との共存時代への移行です。どうやらその典型がアップルウオッチだと見られ始めています。商品やサービスがデジタル移行と相性が良い、お金、音楽、書籍、テレビなどは業界の創造的破壊(著しい代替財効果)が働きましたが、それもMOOCへと移行する教育業界あたりが最後かもしれません。
スイスの腕時計業界へのアップルウオッチなどの影響は1970年代のクオーツウオッチによる創造的破壊(代替財効果)による業界縮小はほとんどありえず、寧ろスマートフォンの登場により腕時計離れをした若者層を腕時計に呼び戻す効果(補完財効果)が働くと言う見方の方が支配的なようです。
注) 初歩的な経済学では椅子と椅子の商品関係は競合するので代替財、椅子と机の関係はお互いを必要とする商品なので補完財と呼んでいます。
■ スイスのスオッチの役目は補完財だった
ハーバードビジネスレビューによれば、クオーツ化(セイコーやカシオなど)の代替財効果により若者の腕時計離れが進む中、スイスのスオッチが電子とお洒落(ファッション)を共に備えたスオッチを出しました。一方スオッチ以外のスイスの腕時計業界の主流は逆にアナログを重視し、女性の宝石やドレスに近いファッション品としての腕時計の道に進みました。味もそっけもない(ファッション性に欠ける)デジタルなど無視した訳です。アナログ回帰の典型です。
またスオッチに呼び戻された当時の若者は「腕時計を使う習慣」を取り戻し、その後年輪を重ねて父親になり、社会的地位も上がると共に宝石化を伴うファッション品としてのスイス高級腕時計業界の顧客になりました。こうして腕時計業界では一旦、アナログが勝利しました。
一方アップル・ウオッチはスイスの腕時計業界とは最初から補完関係の方が強く、ゆっくりと穏やかに嗜好品、高級品としてのスイス腕時計業界をネットで支える方向に向かわせるのではないかとみられます。アップルウオッチがスマフォで腕時計離れをした若者を腕時計に呼び戻す役を果たします。だからスイスの腕時計業界の一部はアップルウオッチを歓迎しています。
■ 電子書籍にも働く補完財効果
米国では出版業界の一定の規模縮小後、電子書籍は寧ろ本を読む習慣を家庭や子供に継承させ、紙の出版業界を支え始めていると言う見方があります。子供達はお昼にタブレットで漫画やアニメを楽しみ、夜はおばあちゃんが紙の書籍で物語を読むと言うのです。これも補完財効果です。
■ 日本のクオーツ腕時計の失敗
日本のクオーツ腕時計は電子の良さを重視し過ぎ、アナログのファッション性を軽視した為、最後は携帯電話やスマートフォンに潰されました。デジタル化が一旦、若者の腕時計を不要にした訳です。今回のスマートウオッチの登場の中でウエアラブルに注力するセイコーエプソンなどの動きがどうなるか注目ですね。同じことはスマートウオッチを出しているソニーにも当てはまります。アナログのファッションとの折り合いをどうつけるのでしょうか?
ファッション性などは「原宿での流行」になどに見られるように市民社会の成熟度合いとの関連です。この点では韓国のサムスンなどに対して日本勢は一日の長があるはずです。
日本勢はアナログのファッション性を全面に出し、それを支えるスマートウオッチと言うアップル戦略を越えることが出来るでしょうか。またアップルウオッチの登場とスイス腕時計業界の今後のゆっくりとした動きにも目が離せません。
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