コカコーラのスマート革命は「幸せのソーシャル自販機からスマート自販機へ」
<序文>
筆者もスマート革命の書籍の原稿の第一稿を書きあげた処ですが、やっぱり「国内家電メーカーが何故負けたか」と言う問題意識は皆さん強く持っているみたいです。さてスマート革命とはパソコンの一人一台時代からスマート機器を一人七台使い分ける時代の到来を意味し「新しい個人コンピューティングの形」が出現します。また「モノ支配論理からサービス支配論理」へと「企業イノベーションの形」が変化します。その結果、全体のエコシステムが変わります。
今回は自動販売機にWiFiネットワークの根と茎が生え、その上にサービスの花が咲くコカコーラのスマート自販機の話題を取り上げます。
コカコーラもペプシコーラも自動販売機のスマート化には共に熱心です。
<引用元:abc>
<ソーシャル自販機>
コカコーラのソーシャルキャンペーンの発展形の話から入ります。
2012年4月、シンガポール国立大学で開始したソーシャル自販機は「自販機をハグする(抱きかかえる)と無料のコーラがもらえる。」と言う単純なものでソーシャル自販機と呼ばれています。コカコーラ得意の幸福心理学に基づく「幸せ運動」の一環ですが、これは米国でも報道され大評判になりました。
コカコーラの基本哲学は幸せ運動ですから。
自販機をハグすると言うことは、コーラの自販機が生活者の友達感覚になると言うメッセージです。これは一種の顧客ロイヤリティプログラムです。一緒にダンスを踊った女性をなんとなく好ましく思うように、ハグと言う行為がコカコーラに対して好ましい印象を与えてくれると言う心理効果を狙っています。
スマート機器のインターフェースの特徴の一つは機器と機器の繋がり、そして機器と人の繋がり=友達感覚のインターフェースですから、これもサービスの大切な要素です。
★★ Would You Hug a Vending Machine for a Free Coke?
vending machine in Singapore (動画説明はこちら)
<スマート自販機>
さて2012年の8月マシャブルに載った記事では、コカコーラはグーグルと組んでチャットルーレットのような偶発的なコミュニケーションにヒントを得て機器と機器の繋がり革命(M2M)、そしてその上での偶発的な会話を上手く経験してもらい、お互いが幸せになると言うキャンペーンを実施しています。
具体的にはある都市を指定してモバイル機器(アンドロイドとiOS)から無料のコーラをメッセージ付きで見ず知らずの受け手の都市を指定してプレゼントすると言うキャンペーンです。メッセージはグーグルが宛先の言語に翻訳してくれます。その為にコカコーラは世界中にプレゼントを受領する為の改造型自販機(WiFiネットワークの根と茎が生えたスマート自販機)を配布しています。例えばニューヨークに住む人がギフトの送り手となり、モバイル機器でブエノスアイレスを指定します。そうすればブエノスアイレスで自販機の傍を通りかかった人が無料のコーラを受け取り、幸せになります。またその時の驚いた様子の動画とお礼のメッセージ(受け手が自販機に入力すれば)が送り手に戻ってきます。その驚いた様子とビデオやメッセージをフェースブックとツイッターに張り付けて送り手も幸せになると言う趣向です。
★★How Coke Spread Happiness (and Cokes) via Mobile
Coca-Cola Mobile Ad Case Video (動画説明はこちら)
<良く出来ている、良く考えてある>
コカコーラのソーシャル+スマートキャンペーンは良く作られており、また同社の哲学である「ポジティブ心理学=幸福心理学」のエッセンスを見事に反映しています。
コーラの上に幸せと言う経験とサービスが載ると言う哲学にマッチしているのでしょう。