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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

スマート革命、トーマス・エジソンとスチーブ・ジョブズの時代の類似

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<序文>

 一人一台のパソコンから一人が七台のスマート機器を操作するスマート革命の時代を迎えて、2010年代はユビキタスネットワークとして提示されたICT革命がいよいよ本格的な姿や形を見せ始めています。

2011年のアップルの故CEOであったスチーブ・ジョブズ氏の死に当たって、19世紀末の発明王トーマス・エジソンとの類似点が指摘されています。今回は一つの技術システムから新しい技術システムへの歴史の転換点に登場した二人の発明王を比べてスマート革命の本質を考察したいと思います。

二人の類似点は「単なる発明王」では無いと言う点と繰り返しますが、一つの技術システムから新しい技術システムへの移行期にその環境の中に身をおくことで新たな技術システムの本質を素早く掴み、それをイノベーションとして具体的なビジネスモデルを完成させた点にあります。

 

★★ 夢の原子力: Atoms for Dream

 エジソンの功績は以下の書籍参照。

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<出所:アマゾン>

 

 

★★ついにエジソンと肩を並べた! スティーブ・ジョブズがグラミー受賞へ

 

<電力技術とコミュニケーション技術>

嘗て米国でメンローパークの魔術師と呼ばれたトーマス・エジソン氏は、GEの創業者の一人としても有名です。彼は東海岸からデトロイトを結ぶ鉄道の新聞売り子を務めていました。そして電信技士に転進し、各地で働きました。新聞、電信、鉄道と言う19世紀末に勃興する新しい交通・通信・運輸産業に身を置いたこの経験が発明王エジソンを作り出したと言われています。

 

そしてエジソンの発明は電信、電話、映画などのコミュニケーション技術と白熱電球や発電機など電気技術の領域が中心となっています。19世紀の末は米国を始めとする西欧先進国は電力によるエネルギー革命と電信、電話、映画などのコミュニケーション技術において大きな発明が行われ、20世紀の大量生産時代を迎えます。

 

面白いことにスマート革命と言う視点からは、電力技術とコミュニケーション技術が二つながら巻き込まれていると言う事実も注目に値します。電力革命はエジソン氏らの発明により火力発電や原子力発電などによる「20世紀の電力の大量生産時代」を迎えました。しかし電力の大量生産はあまりにも「副作用」が大きい(火力発電は低炭素社会と矛盾、原子力発電は技術の安全性に問題がある。)ことから、風力発電やゴミの焼却などのクリーンで多様な小規模発電などを組み合わせた新しい電力革命の時代を迎えようとしています。これも又、スマート革命と呼ばれています。

 

また電信や映画、新聞などエジソン時代のアナログ型コミュニケーション技術革命は、インターネットと多様なスマート機器の連携によって大きく変化し、新しい技術の時代を迎えようとしています。

 

<エジソンとジョブズの共通点、イノベーションの新しい形の提案>

さてエジソン氏は白熱電球の発明で有名です。しかし当時の米国には他にも多くの発明家が既に白熱電球を開発していました。しかしエジソンの凄いところは、京都の竹などを使って耐久性のある商品を作り、大量生産が可能な事業の形にした点でした。また彼は電気のエコシステムをよく理解しており、直流の電力会社を起こし、発電と送電の為の電気事業を立ち上げました。

 

一方ジョブズ氏が音楽の為の携帯用端末(iPod)を開発した頃、米国市場に出回っていた類似の音楽端末は30個とも50個とも言われています。しかしジョブズ氏の凄いところはサービスとして洗練されたインターネットの市場の仕組みを作り上げ、同時に音楽業界を説得して大量の楽曲の販売権(流通の仕組み)を獲得した点でした。音楽のビジネスを取り巻くエコシステムに対して十分な対処をしていたと言う点でしょう。

 

個々の白熱電灯や音楽端末の発明者は多数いても、サービスの流通と販売を含む全体のエコシステムをリードして事業を起こした点が社会に評価され、発明王であるエジソン氏とジョブズ氏の名前のみが歴史に残った理由であると言う見方があります。

 

<日本家電メーカーの失敗の本質>

2012年の第一四半期(4-7月期)が終焉しましたが、未だにソニーとシャープが赤字に苦しんでおり、シャープの株価は一時164円まで下がりました。(通常、100円が会社の経営危機ラインと言われています。)そして追加のリストラが発表されるようです。

電話やテレビ、自動車などの家電製品にWiFiネットワークの根が生え、茎が伸び、その上に豊かなサービスの森が茂るスマート革命において、多くの日本メーカーは単なる機器の部分しか視野に入らなかったのは明らかです。またシャープもソニーもパナソニックもサービスの森を作ろうと努力しましたが、電子書籍など内容の洗練度とスピードの面でアップルなど競合には勝てませんでした。同じことは携帯電話のノキアやリム(ブラックベリーの製造企業)にも当てはまります。

 

★★ さよなら!僕らのソニー (文春新書) 

 

ソニーの場合、「デジタル・ドリーム・キッズ」を提唱した前々CEOの出井伸之氏や前CEOのハワード・ストリンガー氏は、「脱ハードウエアとネットワーク・コンテンツの重視」と言う戦略の方向性を逸早く打ち出しました。「さよなら!僕らのソニー」(文春新書)を読めばわかりますが、彼らは国内他社と比較してスマート革命を戦略面からは、十二分に理解していました。「さよなら!僕らのソニー」では「ハードウェアとコンテンツの融合はあり得ない」などスマート革命を否定する立場から、お二人が悪の元凶とばかり批判していますが、筆者から見れば明らかに戦略面は正しい方向でした。


しかしエジソン氏やジョブズ氏と比較した場合、ソニーの前経営者の皆さんは具体的な勝ちパタンの事業モデルを提示できませんでした。リーダーシップの強さ、官僚制の壁などが理由なのでしょうが、エコシステムを含んだ「具体的な勝ちパタンの事業モデル」の欠如は大きいと考えられます。


更に細かい事を言えばスマート革命の時代に求められる「友達型のユーザーインターフェース」の基礎を作ったアイボなどのAI研究を葬り去った点でしょう。戦略はあってもスマート技術の進化の方向を見る目がなかったといえます。これは戦略とオペレーションの分離の弊害でしょうか。その結果、ソニーのお二人は時代に挑んだその他大勢の人々と同等にカウントされ、歴史の舞台からは忘れ去られることになるのかもしれません。

 

 

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