【ワタクシの仕事術7】 ガンジガラメから脱するには、たまにキレた方がいい?
私がガンジガラメから脱したいと考えたのは、非常に個人的な想いからだった。ひとつは、会社が勝手に私の勤務地を決めるというシステムに、納得がいかなかった。「自分の住む場所くらい、自分で決めさせろ!」と考えた。もうひとつは、毎日同じ時間に、同じ場所へ通うという働き方が嫌だった。つまり、根本的にサラリーマンに向いてなかった。このため入社して早々に、ガンジガラメの生活から抜け出した。
以来、フリーランスのコンサルタントとして十数年。いろんな業界・立場のビジネスマンに出会って感じるのは、「ガンジガラメに気付いていないガンジガラメな人」が案外多いという事実・・・。
飲み屋でガンジガラメ
「給料が安い」、「上司が仕事がデキない」など、自分の会社への不満を漏らす人が多い。会社に不満がない人などいないだろうが、それにしても、愚痴をこぼすのが日本サラリーマンの文化のようになっている。そこで不満を解消するには転職が手っ取り早いと考え、転職に踏み切る人が後を絶たない。
しかし、会社を移れば移ったで、また同じような不満を抱えることになる。不満を解消するための"後ろ向きの転職"では、問題は解決しない。ダメな上司から逃れたつもりなのに、移った先の会社には、さらにダメな上司が君臨していたなどという話も、よく耳にする。
さて、愚痴をこぼすのはオフィスでなく、飲み屋など"会社の外の世界"というのが定番だ。みな雄弁に会社への不満、上司への不満を語るのだが、翌朝は何事もなかったかのように出社していく。ストレス発散には良いが、ガンジガラメは変わらない。
日本人は一般的に感情表現がヘタな国民性と言われる。それは欧米人のようにはっきりイエス・ノーを言わないからだ。しかし、この意見には誤解がある。日本人は感情表現をしっかりできるのだが、その感情を表す"タイミング"がヘタなのだ。
デキない上司が懲りずにヘマをした。それを飲み屋で語るものだから、上司は気付かないままなのだ。それでは職場の状況は一向に変わらず、不満は募り、ガンジガラメに陥っていく。では、どうすれば?
たまには職場でキレた方がいい
納得がいかないことがあれば、その場で、そのタイミングで「違うでしょう!」と声を上げなければ効果はない。黙っていては損をするばかりか、何も言われない相手は「これで良いのだ」と思ってしまうだろう。
相手が上司や先輩なら、確かに言いづらい。そこで不満をやんわりと伝えたり、静かに指摘したり、オブラートで包もうとする。しかしオブラートに包めば包むほど、冷静を装うほどに、相手に真意は伝わらなくなる。
飲み屋でなく、ときには職場でキレることも必要ではないだろうか?
私は基本的に、キレる。どうしようもない場合は、キレることに決めている。自分の主張を通すためにはやむを得ない。たとえ相手が自分より立場が上でも、自分のビジネスにデメリットが生じようとも、キレる。キレないと伝わらないこともある。
仕事のガンジガラメに縛られて・・・
「それは前例がないので・・・。」「それは無理だと思います・・・。」という言葉を、この十数年、幾度となく耳にしてきた。前例がないならやった方が良いと思うし、無理なら面白そうと思うのだが、ふんぎりがつかない人がいる。その理由をたずねると「自分の権限では無理」だとか、「業界のルールがある」という答えが返ってくる。
ではいつ、誰が、前例を破るのだろうか? 仕事に対する不満を語る人に限って、実は自分自身で仕事に制約を設けている。これはチャンスをみすみす見逃していることにほかならない。
私は「やったことがない仕事」を持ちかけられることが多い。しかし、相手から「できますよね?」と問われれば、「たぶん、できますよ。」と即答することにしている。たいていは不安なのだが・・・。
やったことがない仕事を1度断れば、それが1つのガンジガラメになる。2度断れば、2つ目のガンジガラメを生み出してしまう。やったことがない仕事でミスをするよりも、やらずにガンジガラメになることの方が、よほど恐ろしい。
働きやすい環境は、自分でつくりだす
職場のガンジガラメ。仕事のガンジガラメ。それらは結局のところ、自分で生み出しているのではないだろうか?
「働きやすい環境」は、じっと待っていてもやってこない。多少強引でも、自分の働きやすい環境は、自分でつくりだす。デキない上司にはきちんとモノ申す。不可能そうな案件でも、諦めずにネゴする。自分で動かなければ、ガンジガラメは終わらない。
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先日、私の長年のビジネスパートナーからとある経営者を紹介され、二人でプレゼンに臨んだときのことである。このパートナーは私のコンサルティング手法を熟知しており、ときおり私に相応しい案件を持ってきてくれる。彼はとある業界の優秀なビジネスマンであり、人材のマッチング能力に長けている。誰と誰を会わせれば双方にメリットがあるのか? 彼はこの辺りの感覚が鋭い。このため、彼が紹介する経営者はいつも間違いがなかった。
ところが、このとき紹介された経営者があまりにも酷かった。こちらの話をまったく理解しようとしない経営者で、自分の会社の弱点に正面から向き合おうとしなかった。その弱点を克服するために私は紹介されたのだが、暖簾に腕押しの状態だった。
私はプレゼンのかなり早い段階で諦めた。この相手には何を言っても無駄だと悟った。そこで、私の隣に座るパートナーに目で合図を送ろうと横を向くと・・・。
「え? 何でお前がキレてんだよ・・・。」
紹介者であるはずのパートナーの目が、完全に血走っているではないか。私は彼をなだめようと別の話題を振ってみたが、彼の怒りは極限に達していた。彼は何と、自分で呼んだ経営者にダメだしを始めた。彼は最初はやんわり経営者を批判する感じだったが、徐々にエスカレートしていき、終いには完全にキレた。何なんだ? このプレゼンは?
彼とは何度も共にプレゼンに臨んでいるが、彼のキレた姿を見るのは初めてだった。普段の彼は沈着冷静であり、温厚かつ理論的な話ぶりをモットーとした、絵に書いたようなデキるビジネスマンだ。だからこそ、業界で大きな成功を収めているはずなのだが・・・。
彼でもキレることがあるんだと、私はちょっとホッとした。実はサイボーグみたいなココロの持ち主なのでないかと、考えていたからだ。 このプレゼンは私のためのプレゼンだ。失敗しても、彼は痛くも痒くもない。それなのに彼がキレたのは、きっと相手が"自分にガンジガラメの経営者"だったからだ。このパートナーもまた、私と同様に、ガンジガラメを嫌うタイプだった。
さて、フリーランスという身分は、時間も場所もガンジガラメとは無縁である。自由人という印象が強いように思われる。しかし「自分で稼いでいかねばならない」という命題だけは、日々頭にのしかかる。このガンジガラメからは、どうやっても逃れることができない・・・。ああ・・・、ガンジガラメ。
(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)
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