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【120万円】 焼却物→牛飼料に転換した、松本空港管理事務所長のステキなアイデア

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 昨年来、穀物市場の値上がりが私たちの生活に影響を及ぼしていますが、もっと深刻なのは家畜や養殖産業の飼料。1.5倍~2倍近い急騰に頭を抱えている事業者も多いと聞きます。そんな中、長野県営松本空港で、ユニークな試みが始まろうとしています。

  • …同空港には延長2000メートルの滑走路周辺に約40ヘクタールの緑地帯が緩衝帯として整えられている。6-10月に3回、業者に委託して草刈りし、計120トンを1トン当たり約1万円で焼却処分していた。県松本空港管理事務所に今春着任した小林資典所長が、経費の節減はもちろん、焼却で発生する二酸化炭素を抑えるためにも草を活用できないか-と考え、飼料化を思い付いた…

     ※10月22日付け 信濃毎日新聞より一部引用

 つまり、年間【120万円】かけて焼却処分していた雑草を、牛の飼料に転換しようというわけです。空港としては、廃棄物を処分する費用を削減できる。家畜農家としては、低コストで飼料を入手できる。何より環境にも良い。つまり、マーケティングにおけるwin-win-winのゴールデントライアングルが成立しているというわけです。

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 小林所長らは、この試案の実現可能性をきちんと順序立てて検証しています。まず長野県畜産試験場に依頼して草の品質を調査し、不適切な種類がないことを確認。そして「刈り取った草に乳酸菌をかけたり、一昼夜乾燥させたりし、空港近くの酪農家の牛に試食させた際の好みとコストの兼ね合いも検証した」(同新聞より)というから素晴らしい。

 さらには飼料のpH検査など成分分析などを行い、最終的に一昼夜干したものが一番適しているとして、すでに農家での試験も実施し、実用化に向けて細かな調整を行っている段階だということです。

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 最近、環境関連の話題を耳にした時に、商売の臭いが強い話も多くて、ちょっと気になっていました。もちろんそれが悪いと申し上げているわけではまったくありません。環境ビジネスは慈善事業としてやらなきゃ、なーんて言ってたら、誰もやるわけがない。商売として成立させなければ、続くわけがない。でも、エコをPRの前面に出しながら、実は商売色が強くてエコ効果はあまりない、というのでは、少し引っかかるものがあります。その点、今回の松本空港の取り組みは、関係者それぞれに利益がもたらされ、しかも環境にも優しいという、理想的なエコ活動じゃないかと感じます。

 さらに。小林所長がすごいなぁと思うのは、アイデアを単なる思いつきに終わらせないよう、ちゃんとステップを踏んで、関係者を巻き込んで検証し、実現にまで結びつけようとしているという実行力です。ビジネスの世界で成功する条件である、win-win-winのゴールデントライアングルと、それを実現させるための検証プロセス。すべてのビジネスに通じるヒントに富んだ施策じゃないかと。。。

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