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ゲーミフィケーションで当選を?

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今年は米大統領選挙の年ということで、徐々に各種メディアでの扱いが大きくなりつつありますが、意外なキーワードと結びついた記事がBBCのサイトに:

Can online gaming influence a US presidential election? (BBC)

同じく最近話題となっているテーマの1つ「ゲーミフィケーション」を、選挙に応用するという発想について。ゲーミフィケーションとは、「ゲームで用いられる手法を他の分野に応用することで、ユーザーの関心やモチベーションを高めるという発想」といった具合にまとめることができるでしょうか。実際にはこういった流行り言葉の常として、定義が曖昧な状態になっているのですが、ともあれゲームの手法を選挙に取り入れることで、応援する候補の選挙活動を支援するという取り組みが解説されています。

"What's happened over the last few years is that politicians, political parties, non-profits, and lobbyists have realised that games can be used to influence voter behaviour," says Gabriel Zichermann, the CEO of Gamification Co.

「ここ数年、政治家や政党、非営利団体やロビイストなどが、ゲームを使って投票者の行動に影響を及ぼすことができると気付き始めています。」Gamification Co.のCEO、Gabriel Zichermannはこのように語っている。

とのことで、既に一定の支持を得ているようですが、実際にはどんなことが行われているのでしょうか。記事ではこんな事例が挙げられています:

Digital advertising firm Engage is currently experimenting with online gamification for some of their political clients. They were part of the team that developed the "I Voted" badge on FourSquare, designed to increase awareness of election day and encourage voter turnout.

They also offer a social media platform, called Multiply, that integrates gamification techniques into a candidates' website. Visitors to the website of House Speaker John Boehner, for instance, can earn badges for checking in from the speaker's home state of Ohio, or by linking the page to their Facebook account.

"The user gets instant gratification, a sense of involvement and participation and gratitude," says Patrick Ruffini, the president of Engage. "The campaign gets data."

That data helps the candidate better organise and target potential voters, donors and volunteers.

デジタル広告を扱うEngage社ではいま、政治家からの依頼を受け、オンライン上でのゲーミフィケーション活用の取り組みを行っている。フォースクエアで"I Voted"(投票したよ)バッジを開発するなど、投票日が近いことを認識させ、投票率を上げようという計画だ。

他にもMultiplyというソーシャルメディア・プラットフォームも活用している。これはゲーミフィケーションの手法を、候補者のウェブサイトに応用しようというものだ。例えば下院議長ジョン・ベイナーのウェブサイトでは、同氏の地元であるオハイオ州にチェックインしたり、Facebookページ上でリンクしたりすることで、バッジを手に入れることができる。

これについて、Engage社社長のPatrick Ruffiniは次のように語っている。「ユーザーは即座に満足感を得ることができる。何かに参加して、その一員となって嬉しいという感覚だ。そしてキャンペーン実施者の側はというと、データを手にすることができる。」

このデータを活用することで、候補者は選挙活動を改善し、潜在的な投票者や寄付者、ボランティアなどにターゲットを合わせることができるのである。

ということで、ウェブサービス上のアイテム程度で行動を促されるかよ!と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、的確にデザインされたアイテム付与がいかに効果的なテクニックとなるかは、現在のソーシャルゲームの流行を見れば一目瞭然でしょう(これでジョン・ベイナー下院議長が次の選挙でも勝つかどうかはまた別の話ですが)。また単に有権者の関心を引くだけでなく、以前このブログでも述べたような「顧客の行動を把握する」という価値を得るためにもゲーミフィケーションが活用されているようです。

もちろん選挙は匿名で行われるものであり、そもそも第三者によって運営されるものですから、それ自体をゲーミフィケーションで味付けすることはできません。しかし上記のように、ある場所やイベント(演説会などがすぐ頭に浮かぶでしょう)に人々を動員するためにゲーミフィケーションを活用し、盛り上がり感を演出したり、寄付金額や寄付回数でユーザーをランキングしてお互いを競わせたり、といった間接的な位置付けならいくらでも可能です。どのようなパートでどのように応用するのが効果的なのか、海の向こうで無数の実験が繰り返されている状況なのでしょう。

言うまでもなく日本では、候補者による選挙期間中のネット活用(選挙活動に関連するもの)はグレーゾーンにあるため、ネットと選挙の関係についてはあまり取り組みが進んでいません。しかしゲーミフィケーションは直接的な情報発信とはまた異なる存在ですから、同じようにグレーゾーンではありつつも、日本でも応用が進む可能性はあるのではないでしょうか。ソーシャルゲームの流行と関連企業の増加は日本でも起きているわけですし、例えばSAPが政治家や政党と手を組んで……なんて未来もあり得るのかも?

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