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クラウド医療の時代

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以前「パーキンソン病の症状を『ゆれ』で捉えるiPhoneアプリ」というアイデアをご紹介したことがありましたが、それに似た発想として、こんな話が進められているそうです:

Mobile app diagnoses malaria from a single drop of blood (springwise)

マラリアに感染しているかどうかを判定するスマートフォン用アプリを開発しようという"lifelens"プロジェクトについて。現在一般的なRDT(rapid diagnostic test)法では精度が60パーセントのため、感染していない人にまで治療に必要なリソースが割かれてしまうことになり、本当に治療が必要な人にまで行き届かないケースがあるのだとか。より手軽で、より精度の高い手法があれば、その分同じリソースで助かる人を増やすことができるわけですね。

さらにスマートフォンのアプリであれば、症状に関するデータや診断結果をすぐにアップロードして、マラリアの流行状況を俯瞰することが可能になります。これは以前ご紹介した"iTerm"(パーキンソン病診断アプリ)や"Skin Scan"(皮膚がん診断アプリ)でも考慮されている機能であり、診断系アプリの利点の1つと言えるでしょう。まだまだ様々な技術を向上させる必要はありますが、可能性として、「現実で何が起きているか」を即座にデータ化・クラウド側に集約して分析することができるようになりつつあると。

東日本大震災でも活用されたツール"Ushahidi"(ウシャヒディ)では、一般のユーザーから集められた様々な情報を、地図上にプロットして可視化することができます。例えばこれを利用して、どこで災害が発生しているか、暴動などで危険な地域はどこか、どこに困っている人々がいるかといった情報を即時に把握することが可能になるわけですね。そこに健康に関するデータ、つまり先ほどのようなマラリアの罹患状況や皮膚がんの発生状況といったデータが加われば、新たな価値を見出すことが可能になるでしょう。このような「クラウド化」の可能性は、地図化以外にも様々な形で応用できるはずです。

さらにデータを吸い上げるという一方通行ではなく、個々の患者にカスタマイズされた情報を送るなど、双方向の利用法も当然考えられるでしょう。スマートフォンが医療機器として認識される日も、そう遠くないかもしれません。

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小林啓倫

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