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IBM、災害対策組織向けのソーシャルメディア監視サービスを検討中

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事件・事故に直面したら、まずは警察や消防へ第一報を入れる――このごく当たり前の行動が、技術の進化の前に変わろうとしています。新しい本『災害とソーシャルメディア』でも触れたのですが、当局への連絡を入れる一方で、ソーシャルメディア上で目の前の出来事を伝えるという人が増えているわけですね。

もちろん当局に情報を集める方が望ましいですし、警察に通報することも忘れてケータイで写真をバシバシ、という人はまだまだ少数派です。しかし可能性として、警察に第一報が入るよりも早く、そしてより詳細な情報がソーシャルメディア上に展開され得るという状況が生まれています。そのため海外の災害対策組織の中には、ソーシャルメディアの監視を公式の業務として行うところも出てきました。

しかし彼らの専門は災害対策であり、これまで第一報を「入れてもらう」立場にあった人々が、第一報を「探し出す」ことに成熟するには時間が必要でしょう。そこでIBMが、こんなサービスを計画中だそうです:

IBM taps social media for disaster communication (iTnews.com)

IBM plans to provide social media monitoring solutions for emergency services within the next 18 months, in a bid to improve communications during natural disasters.

Glenn Wightwick of IBM's research and development lab in Melbourne looked to "virtual integration" of information as one of several data sources during a disaster, in addition to official services, broadcasters and telcos.

Mining information from Facebook and Twitter during the situation would allow emergency services and police to locate potential victims and map the spread of a natural disaster over a given area, Wightwick said.

IBMは自然災害発生時のコミュニケーションを改善するために、緊急対策組織向けのソーシャルメディア監視ソリューションを今後18ヶ月以内に提供する計画であることを明らかにした。

メルボルンにあるIBM研究所のGlenn Wightwick氏は、情報を「バーチャルに統合」し、公的サービスやマスコミ、通信会社に並ぶ災害時の情報源の1つとして役だてることを模索している。

災害時にFacebookやTwitter上の情報をマイニングすることで、緊急対策組織や警察が犠牲者の位置を特定したり、特定地域における災害の広がりを地図上にプロットしたりといった行動が可能になるだろうとWightwick氏は述べた。

つまり災害時にソーシャルメディア上の情報をリアルタイムで集め、分析を行うことで、その中から救助活動に役立つ情報を抽出して当局に提供すると。似たような試みとしては、例えばTwitter上の書き込みからカゼの流行状況を分析・可視化する「カゼミル」というサービスがありますが、これをより高度化して信頼性を高めるようなものと言えるでしょう。

こうした分析技術が確立されれば、いわゆるデマの問題についても、1つの解決策が提示されることになる可能性もあります。例えば情報の発信源となったユーザーの過去の行動を洗い出す(ユーザー登録が行われたのはいつか、他のユーザーとの交流上で不自然な点はないか等)ことで、ある程度の「確からしさ」を判断することができるでしょう。さらに昔ながらの情報ルート、つまり119番(米国なので911と書くべきでしょうか)への通報と組み合わせて分析することもできるようになれば、より精度の高い状況把握が可能になるはずです。

いずれにしても、ソーシャルメディアの災害時活用に対する研究は始まったばかり。今回のIBMの取り組みのような形でのアプローチも、今後さらに生まれてくることを期待したいと思います。またこうした取り組みが増えることで、ソーシャルメディア自体の価値も高まって行くと言えるのではないでしょうか。

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