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指示しないリーダー

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普通「リーダー」と言えば、組織の頂点に立ち、あれこれ指示を出して人々を引っ張るというイメージです。しかしこれからは、「指示しないリーダー」が一般的になるのかもしれません。

最近、関連する2冊の本を読みました。社員がやりがいを持って働くためにはどのような組織であるべきかを論じた『なぜ社員はやる気をなくしているのか』と、以前もご紹介した「リーダーのいない組織」を論じた"The Starfish and the Spider: The Unstoppable Power of Leaderless Organizations"です。もちろん同じ著者によるものではなく、対象としているのも日本とアメリカという別々の国ですが、訴えるところは同じであるように思いました。

両者の共通点とは、「これからはリーダーが組織を動かすのではなく、構成する人々が主体となって組織を動かすべき」という訴えです。トップが何もかもが決めてしまうような組織では、現場の主体性が失われ、現場に眠っている貴重な知識が活かせない。また上の指示待ちをしているような組織では、スピードが優先される時代にも関わらず機動的に動けず、さらにトップの判断ミスが最悪の結果をもたらすこともある。ならば現場が主体的に動く組織 -- "The Starfish and The Spider"で言うところの「ヒトデ型組織」 -- を構築せよ、というのが大まかな説明になるでしょうか。

それではリーダーというのは、現場の分からないただの官僚的存在になってしまうのでしょうか?もちろんそんなことはなく、『なぜ社員は〜』では新たな役割として、以下のような提言がなされています。

だからこそ、組織のトップや上司のサポート体制は、社員が問題を提起するにあたって不可欠の要素である。ただし、このように「組織の問題点をなんとかしたい」と自発的な意思で行動しようとしている人々に対する支援機能は、通常の「リーダーシップ」とは少し意味合いが違う。本書ではこの種の支援機能を「スポンサーシップ」と呼んでいる。

つまり、「部下を引っ張る」といった今まで重要とされてきた役割ではなく、「部下の主体性を強めて潜在的な力を出すリーダーシップ」が「スポンサーシップ」なのだ。

つまり構成員が自ら行動する組織では、自ら行動するように仕向ける/行動の邪魔を取り除くことがリーダーの役割になるわけです。同様に"The Starfish and The Spider"では、ヒトデ型組織には"catalyst"(触媒)という役割が不可欠だとしており、彼らはまさしく「触媒」として組織の構成員を鼓舞し、支えていく人物と定義されています。そこにあるリーダー/構成員の関係は、「指示する人/される人」というイメージでは全くありません。よく例えられる話ですが、サッカーの監督は試合前にやって欲しいことを伝え、試合中は選手を信頼して見ているしかないという点で「サッカーの監督/選手」というイメージが近いかもしれませんね。

もちろん今後も、「指示出し型」のリーダーの必要性が失われることはないでしょう。『なぜ社員は〜』の中でも、例えば会社が危機的な状況に陥っている時などは、「自分で答えを出せる能力の高いリーダーが非常に有効に機能する」と指摘されています。しかし人間は指示されることに慣れてしまうと、自分の頭で考え、行動することをしなくなるもの。会社が生き残ることが最優先、という非常事態でもない限り、これからは「指示者ではなく触媒となるリーダー」が期待されているのではないでしょうか。

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