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【書評】『スターバックス再生物語』

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少し前に読了していたのですが、なかなか紹介する時間がなかったのでこの機会に。

スターバックス再生物語 つながりを育む経営』がFacebook上でいいよーと紹介されていたのを見て、即座に購入して読んでみました。以前『スターバックス成功物語』という本がありましたが、本書はその続編というわけではないものの、同じくスターバックス創業者ハワード・シュルツ氏の著作です。

前作が文字通り「スターバックスが成功するまで」を描いた一冊だとすれば、本書はその失敗と再生を描くもの。ご存知の通り、スターバックスは不況のあおりもあって大きく業績を落としていましたが、シュルツ氏が会長からCEOに復帰してからは再び過去の勢いを取り戻しつつあります。『スターバックス再生物語』では、そんな回復がなぜ可能だったのか、またシュルツ氏がどんな思いから復帰し、何を考えて決断を下してきたのか等々が詳しく描かれています。

実際のところ何がスターバックスの再生をもたらしたのかについては、様々な解釈が可能でしょう。効率化に成功した。新商品がヒットした。ソーシャルメディア戦略が当たった等々、細かい面を挙げて行けばきりがありません。もちろんそういった個々のソリューションも大事な要素ですが、本書が視点を当てているのはより大きなレベルの話、つまり全世界に1万6000店を展開するという巨大な企業を1つにまとめ、同じ方向に向けて動かして行くことに如何にして成功したのか――この点についてCEOたるハワード・シュルツ氏自らが語っているというのが、本書でしか得られない価値ではないかと感じています。

例えばシュルツ氏は、CEOに復帰してすぐ新しいミッション・ステートメントを発表しています。その詳しい内容については本書を読んでいただきたいのですが、大切なのはミッション・ステートメントを単に「額に入れて壁に飾ってあるだけのもの」にせず、それを非常に心に残る形でマネージャーや従業員に伝え、生きた行動指針として活用しようとする姿勢です。またそれ以外にも本書を読んでいると、様々なイベントや社員・ステークホルダーが集まる場を利用して「何を目指しているのかを伝えよう」という姿勢がそこここに見られることに気づくのではないでしょうか。

シュルツ氏は本書で、「ビジネス哲学や、思いや、計画していることを一緒に働く仲間に率直に語るのは、1986年以来わたしの習慣となっていた」と語っています。その言葉通り、本書の中には非常に印象的な言葉が次々に登場してきます:

  • 何千店舗という店や何百万人というお客様の数でスターバックスを定義してほしくはない。規模ではなく、コーヒーの質や価値で定義してほしい。地域社会、絆、敬意、尊厳、人間性、説明責任で――。世界がこうした観点からわたしたちを見るようにするのが、わたしたちの使命だ。
  • 負けないためではなく、勝つための挑戦だ。過去何年かの間、スターバックスは恐れから行動を起こしていた。主に失敗を恐れていたのである。みずからを守るための受け身の行動だった。お客様に積極的に関わるのではなく、収益目標に届かないことから逃れるのが主な目的だったのだ。パートナーたちの勇気を呼び起こし、もう一度、大ヒット商品を生み出したいという欲求を育てるのはCEOのわたしの仕事だ。
  • わたしはずっと以前から、業務上の命令においても、人々に刺激を与えるときも、言葉や表現には大きな力があることを信じている。複雑で仰々しい言い回しをせず、感情や意味を簡潔に、疑問を残さずになにが期待されているのかを伝えるのが最適だ。
  • あるとき、わたしは部屋いっぱいのシニアリーダーたちに言ったことがある。「原点に戻らなければなりません。泥まみれになっても頑張りましょう」。自然とこう言っていた。「手を泥だらけにして頑張りましょう」手を目の前に掲げ、そう呼びかけた。このたとえが気に入った。わたしの伝えたいことをよく表しているからだ。その日以来、すべての職位の人々に対して何度も繰り返し使った。
  • なぜわたしがCEOとして復帰したのか、そして、なぜCEOを続けているのかを不思議に思う人がいる。「そんな必要はないはずだ。なにが彼をやる気にさせるのだろう」と。答えは簡単なことだ。この会社を愛しているからである。そして、それに伴う責任も。

もちろん本書には執筆を専門とする共著者がいるので、全てがシュルツ氏から紡がれた言葉だとは言えないのですが、それでも全編を通して読んでみればシュルツ氏が優れたコミュニケーターだと感じられるでしょう。自分の信念を率直に語ること――それが何より「再生」をもたらした原点ではなかったのかと、本書を読んで強く感じています。

スターバックス再生物語 スターバックス再生物語 つながりを育む経営
ハワード・シュルツ ジョアンヌ・ゴードン 月沢 李歌子

徳間書店 2011-04-19
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ちなみに本書の原題は"Onward"(未来へ!)。なぜこの言葉がタイトルとして使われているのか、理由はちゃんと書かれていますので読んでみて下さい。邦題で前作『スターバックス成功物語』とのつながり感を出す必要があったということは分かりますが、個人的にはこの"Onward"一文字でもカッコ良かったろうなぁなどと思ったり。

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