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【書評】『不合理だからすべてがうまくいく』

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早川書房の東方様より、『不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」』をご献本いただきました。ありがとうございます。読み終えるのがすっかり遅くなってしまったのですが、簡単にご紹介&書評を。

タイトルから想像できるかもしれませんが、本書は行動経済学者ダン・アリエリー氏の著作『予想どおりに不合理』の続編にあたります(前作の紹介エントリ)。前作同様、人間が知らず知らずのうちに行っている「不合理」な行動に光を当てるのが本書の趣旨。また様々な心理実験(そしてその結果)を通じて、私たちがいかに愚かな判断を行う存在であるか浮き彫りにされて行きます。

しかし「人間の判断は愚かだ」と指摘し、暗ーい気分になるのが本書の目的ではありません。タイトルに「不合理だからすべてがうまくいく」とあるように、不合理な判断であっても時には役に立つ、むしろ役に立つようにするにはどうすれば良いのか?を考えようとダン・アリエリーは呼びかけます。

例えばこんなケース。何かイヤな仕事を押しつけられて、それを片付けなければならない状況に置かれたとしたら、あなたは一気に片付けようとするでしょうか?それとも休憩を挟むことで、リフレッシュしながら取り組もうとするでしょうか?

こういうのはだいたい直感に反している方が正解なので(笑)、だいたい答えが分かったかもしれませんが、行動経済学的に正しいのは前者の方。人間の脳には「順応」という機能があり、幸福を感じる環境であろうと、逆に不快感を感じる環境であろうと、どちらも次第に慣れてしまうものなのだそうです。しかし途中で中断が入る(先ほどの休憩を取るという行為のように)と順応プロセスが遅れてしまい、なかなか慣れるまでに至らないのだとか。従ってイヤな仕事を押しつけられた場合には、脇目もふらず一気に片付ける方が、不快感を感じる度合いが少なくてすむ……という次第。

では逆に、幸福な環境にいる場合はどうか。先ほどの反対だと考えれば、楽しい出来事こそ中断を挟め、ということになりますね。で、実際にこんな実験結果が紹介されています:

中断といえば、テレビもそうだ。わたしたちは、暮らしからコマーシャルを追放するために、むかしからありとあらゆる装置や、ティーボのような自動録画サービスに、大枚はたいてきた。でも『ロスト』や『アメリカンアイドル』の最新回は、ひょっとすると、CMの中断がしょっちゅう入るからこそ、一層楽しめるのではないだろうか?レイフ、トム、ジェフ・ガラクは、なんとこれも試してみた。結果はどうだったか?テレビ番組を中断なしで見た人は、番組が進むにつれて、喜びが薄れていった。ところがCM入りで見た人は、番組が何度も中断したことで、喜びの度合いが高まったのだ。そうは言っても、こういう研究結果とはかかわりなく、わたしはこれからもティーボを使い続けるだろう。

僕も実際にはCMスキップを続けるでしょうが(笑)、こんな風に「不合理」な脳のメカニズムであっても、それをうまく活用することで、仕事や生活に役立てることができることを本書は教えてくれます。「明日からすぐに使えるアドバイスばかり!」というわけではありませんが、「そういう心理があるなら、こんな応用ができるんじゃないかな」と刺激される話が満載でしたよ。

ちなみに前作『予想どおりに不合理』の増補版も発売されたとのことで、一冊いただいてしまいました。こちらも改めてご紹介させていただきたいと思います。

不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
ダン アリエリー Dan Ariely 櫻井 祐子

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