「第3の並べ方」のトレーニングとしての InterConnect 2007
昨夜はAMNのイベント「InterConnect ブロガーミーティング」に参加してきました。マイクロソフトの製品「Microsoft Office InterConnect 2007」を体験するイベントで、詳細は Polar Bear Blog の方でも書いたのですが、書き切れなかったことを少し。
ブログを書かれている方は、InterConnect という製品は「ブログを書く感覚でメモがとれるツール」とイメージすれば分かりやすいかもしれません。上のスクリーンショットが実際の画面なのですが、上部にある「新しい記録」というところがメモを書き込む部分。その下にあるのが過去に書いた記事で、ブログと同様に、逆時系列で積み重なっていきます(上の画面では、3つめの記事=一番古い記事のみ詳細を展開していて、残り2つは閉じてタイトルのみを表示させています)。また個々の記事には画像やファイルの添付が可能で、さらに記事のカテゴリを複数つけることができます。これだけ見ると、まさしく「ローカル上にあるブログ」といった感じでしょう。
で、しばらく使っているとどんどんメモ(記事)が溜まっていき、これを再利用しようという場面がやってきます。その際、例えば「Xプロジェクト」などというカテゴリに分類されているメモを一覧表示させたり、期間でフィルタをかけて表示することで、「そういえば過去にこんなことがあったな」と思い返すことが可能になるわけですね。既にブログを備忘録代わり使われている方は、この感覚がイメージしやすいのではないでしょうか。
さらに InterConnect では、「人」をカテゴリ代わりに使うことができます(Outlook 2007 と連動し、連絡先に登録されている人物情報をそのまま利用可能)。例えば「議事録」などといったメモを作成し、「連絡先」の欄に「Aさん; Bさん; Cさん」のように人物情報を含めておくと、後から「Aさんと過去にどんなやり取りがあったかな?」となった時にこの「議事録」を呼び出すことができるわけですね。さらに Outlook と連動しているので、Outlook で送受信したメールで「Aさん」に関連することも一覧表示させることができます。
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さて、InterConnect 2007 がどんなものかイメージしていただいた上で、本題に入ります。
こういった「ブログ的な情報の整理方法」、慣れていない方には若干とまどいがあるのではないでしょうか。これまで情報の整理法というと、本棚のように「ある1つのルールでコンテンツ(この場合は本)を並べる」という方法か、図書館のように「コンテンツのメタデータが記されたもの(この場合は目録カード)をある1つのルールで並べ、コンテンツが実際に置かれている場所とリンクさせておく」という方法がほとんどだったわけです。そして並べ方は「コンテンツを探す際に探しやすい(と万人が考えるであろう)ルール」でなければなりませんでした。今回のように、「並べ方は時系列。ただし内容を示すメタデータを、カテゴリ/人という形で複数登録しておく」というやり方で、果たしてうまく行くのか?という懸念があるでしょう。
以前もご紹介した本"Everything Is Miscellaneous: The Power of the New Digital Disorder"では、最初の方法(コンテンツ自身を一定のルールで並べておく)を「第1の並べ方」、次の方法(メタデータを書き留めたものを一定のルールで並べておく)を「第2の並べ方」と呼んでいます。そしてデジタル情報の特性を活かし、コンテンツのメタデータを無数の「タグ」や「カテゴリ」という形で付けておいて、後から自由な並べ替え・閲覧を可能にすることを「第3の並べ方(The Third Order of Order)」と呼び、これこそがデジタル情報を最大限に活用する方法だと提唱しています。
考えてみれば、これまでデジタルの世界で情報を探す・整理する方法は、現実の世界のイメージに引っ張られたものでした。例えば「ディレクトリ型のフォルダを作っておき、そこにファイルを保管しておく」という発想は「第2の並べ方」に近いわけですよね。「プロジェクト単位」というルールでディレクトリが構築されていたら、「お客様の業界」という基準で情報を探すのは一苦労になってしまうわけです。また最近流行りのデスクトップサーチは非常に便利なツールですが、やっていることは「目の前にある資料の中を片っ端からチェックしていく」ということと変わりません(正確には異なりますので、あくまでもイメージとしてお考えください)。「第3の並べ方」は現実に縛られない、デジタルならではの発想を初めて具体化したものと言えるでしょう。
しかしそれだけに、「第3の並べ方」を使いこなすのは難しいはずです。たとえ複数のカテゴリが登録できるといっても、多くのユーザーは「プロジェクトA、プロジェクトB、……」などのように「ディレクトリ構造をイメージしたルール」しか思いつかないのではないでしょうか。それでは単に「メモが取りやすいツール」となってしまうわけで、InterConnect 2007 の価値を最大限引き出すためには「第3の並べ方」を十分に理解することが必要となります。デスクトップサーチのように、「インストールして勝手に使って」ではダメなツール、というわけですね。
ただ、逆に僕は「第3の並べ方に親しむツール」として InterConnect 2007 が使えるのではないか、と感じました。「よく分かんないけど使ってみよう」というにはちょっと値が張るソフトですが(実行には Outlook 2007 が必要で、Outlook 2007 + InterConnect 2007 のセットで1万6千円)、ブログと同様に、まずは触って様々なデータを登録してみるというアプローチが良いのではないでしょうか。それだけに、機能を限定して安価にした「ベーシック版」の登場が望まれるところだと思います(できれば無償配布を!?)。