リアルタイムデータ収集システムとしてのスマートフォン
スマートフォンのシェア拡大が続いています。日本国内でも、スマートフォン台数は2015年までに2000万台を突破するという予測が出ていますが、それではこの「インフラ」をどのように活かして行くのか。IBMから面白い提案が行われています:
■ iPhone app lets citizen scientists monitor the local watershed (Springwise)
CreekWatchというプロジェクトについて。"creek"とは小川という意味で、文字通り小規模な河川の状態をチェックしようというプロジェクトなのですが、ユニークなのはiPhone+専用アプリ+市民の力を役立てようという点です。
よく引き合いに出されるデータですが、地球上にある水全体の中で、私たちの生活に使える分は0.8パーセントしかありません。従ってこれからも人類が成長を続けるためには、限りある水資源を有効に管理する必要があるわけですね。そのためにまずは河川などの状態を正確に把握しなければならないわけですが、専門の調査員の数は限られている――そこでiPhone+専用アプリを使い、市民ボランティアでもデータ収集に参加できるようにしようというのがCreekWatchのアイデアになります。
実際にどのようなアプリなのかは、以下のビデオの1分30秒辺りから解説があります:
まず水量と流れの速さ、ゴミの量について状況を入力するのですが、これを3択で行うことができるようになっています。さらにそれぞれの選択肢について目安となるイメージ画像が用意されており、迷うことがありません。そして実際の河川の様子を写真に撮り、データをアップロード(はっきりとは言及されていませんが、位置情報は自動的に端末側で設定されるようです)。集められたデータは公式サイトで公開され、「これは間違っているのではないか」と感じたデータについては、ボタン1つで運営者に報告できるようになっています。
このようにスマートフォンを使い、データ収集の手順を簡略化してやることで、誰でもデータ収集に参加できるようにする=リアルタイム(に近い)データの量を増やそうとしているわけですね。最終的にはボランティアのモチベーションをどう維持していくかという点が問題になると思いますが(Foursquare的に、ある河川の状況をレポートした回数の多い人に称号を与えるとか)、それ以外の障壁を取り除くことにスマートフォンを上手く活用していると言えるのではないでしょうか。
以前「ききみみずきん」というアプリ(野鳥の鳴き声をマイクで収集すると、音声認識エンジンを使って鳥の種類を特定することができ、さらに観測データを観察場所の位置情報と一緒にデータベース化できる)もありましたが、こうして考えてみると、インフラとしてのスマートフォンを応用できる領域はまだまだ多いのではないかと思います。それを利用して、どこまで機能する仕組みをデザインできるか、が問われているのでしょうね。
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