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「オンライン」には、「磁気ディスクによる受け渡し」も含まれるらしいという話

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「オンライン」という言葉から、何を想像されますか?PCやケータイからネットにアクセスして、ネット上にあるデータを操作する、あるいはネットを介して誰かとデータをやり取りする、というのが一般的なイメージだと思います。しかし政府の人々は、どうも違ったイメージを持たれているようで:

ネットで新車登録、国交省「54%」検査院「0.7%」 (asahi.com)

国土交通省が54%と発表した全国の自動車新規登録でのオンライン利用率が、実際には10都府県で0.7%だったことが会計検査院の調べでわかった。オンラインでの新規登録は、ネットで一括申請ができる「ワンストップサービス(OSS)」に限られるが、販売業者が運輸支局などに磁気ディスクなどで持参した分を加えていた。

冒頭のこの一文で全てが現されていますが、国土交通省が開発した「自動車保有関係手続のワンストップサービスシステム」の利用率が、政府発表よりも大幅に低いのではないかという話。恥ずかしながらこんなシステムがあることを初めて知ったのですが、開発に六十数億円がかかっているのですね(うーん、受注したかった)。これだけの投資が行われたシステムですから、あまり利用されてませんとは口が裂けても言えなかったのでしょうが、

同省は「(磁気ディスクでの持ち込みも)広い意味でのオンラインだと解釈している」と説明。

というのは流石に強弁では。さらに上乗せされたのが数パーセント程度ならいざ知らず、0.7%が54%になっているのは問題でしょう。正直に発表した上で、「利用率を上げる宣伝が必要なので、予算ください」と言うこともできたように思うのですが。

最近『グラフで9割だまされる 情報リテラシーを鍛える84のプレゼン 』という本を読みました。タイトルの通り、グラフで騙すテクニックを解説してくれる本なのですが、それだけでなく「いかにして元のデータを歪めるか」という点にまで踏み込んでくれています(もちろん真似するためではなくて、そんなテクニックに騙されるのを防ぐための本ですが)。例えば、

あまり知られていないことだが、円グラフには格好のつけ込みどころがある。「何が全体(100&)を構成しているのか」を見落とす人が多いことだ。戦争反対者連盟(WRL)という反戦団体によるチャート(図表5-8)はその見本である。それによると、米国の所得税収入のほぼ半分近くが、現在と過去(恩給、支払利息など)の軍事関連支出に費やされていることになる。

問題は、何が「全体(100%)」を構成しているかだ。本来なら米国の歳出であるべきだから、公的な資料によれば、図表5-8の右下の図のようになる。しかしWRLでは、そこからメディケア(高齢者医療制度)やメディケイド(低所得者向け医療補助)を差し引いている。一般税収を財源とするのではなく、給与所得から源泉徴収される社会保障費だから、という理屈だ。その伝でいくと、大半の社会保障費はこうして除くことができる。だがWELは、「あなたの所得税は何に使われているか?」という題を掲げることによって、こうした手口を隠蔽している。

さらに、もっと議論を呼ぶべきことがある。WRLでは政府再建に対する利息支払い(政府予算のなかでも最も急増している費用項目だ)の80%を軍事費扱いとすべきとしていることだ。(以下略)

※図表の転載はしていませんが、WRLのウェブサイト上で同じ円グラフが掲載されていますので、興味のある方はご確認下さい。

この箇所だけでなく、この本には「さすがにここまで酷い改ざんはないだろ」と思わせるような具体例がいくつも載っているのですが、今回冒頭のニュースを目にしたことで考えが変わりました。データをどう加工しているのか、そもそも元のデータはどうやって作られたのかという点は、いくら注意しても注意し過ぎるということは無いと。

しかし「そもそもCD-ROMのやり取りを『オンライン』に含めているはずがないだろ」というような真っ当な思い込みを回避するのは難しいですよね。ダマす側にこんなお願いをするのも何ですが、せめて発覚したときに思わず脱力してしまうような、バカバカしい言い逃れだけは止めて欲しいものですが……。

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