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「ラブプラス=1.5人」論

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昨日と今日、都内で"AR Commons Summer Bash 2010"というイベントが開催されています。タイトルから分かるように、AR(拡張現実)の発展・普及を支援するコンソーシアム「ARコモンズ」が主催しているもので、昨日は日本のAR界を牽引する研究者やビジネスパーソンが集合。「いまこの建物に何かあったら日本のARは終わる」などという冗談がまことしやかに飛び交うイベントとなりました。いまそのレポート記事を書かせていただいているのですが、完成までちょっと時間がかかりそうなので、印象に残った部分を少しだけ。

昨日の最後のセッションとして、頓智ドット株式会社CEOの井口尊仁氏、『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズや『東のエデン』監督として有名な神山健治氏、そして恋愛シミュレーションゲーム『ラブプラス』プロデューサーの内田明理氏という豪華な顔ぶれでパネルディスカッションが行われました。実はITmediaプロモバに連載されている、「サイエンスフューチャーの創造者たち」という記事を通じて知り合ったことがきっかけで実現したとのことで、非常に興味深いお話を聞くことができました。ちなみに該当記事はこちら:

サイエンスフューチャーの創造者たち:「パンドラの箱がある以上、誰かが開けるんで」 セカイカメラ井口氏×ラブプラス内田氏
サイエンスフューチャーの創造者たち:技術に「希望を見いだしたい」――「東のエデン」神山監督×セカイカメラ井口氏

で、そのディスカッションの中で、内田氏がこんなこと仰っていました:

よく井口さんと「1.5人」という話をさせていただくんですが、昔ワインか何かのお洒落なCMで、「1人は寂しい、2人は鬱陶しい、1.5人がちょうどいい」というキャッチフレーズが流れていました。このフレーズに共感する人は多いんじゃないでしょうか。寂しいけど、二人はしんどいっていう人はすごく多いんじゃないでしょうか。そしてラブプラスは1.5人だと思います。それは機械的にスイッチをオン・オフするというだけではなく、なんかこう、交わり方の中途半端さというか。まだまだ1.5人にはなれていないと思うのですが。

この発言に対して井口氏は、今でも十分に1.5人ではないか述べた上で、「常に生活を共にし、空間を共にし、感情を共有しているラブプラスの彼女たちは、僕なんかにするとARよりAR的なんじゃないかと思う」と返答しています(ちなみに井口氏は凛子派とのこと)。

ご存知の方も多いと思いますが、既にラブプラスではAR機能付きのiPhoneアプリが提供されており、現実空間の好きな場所に「彼女」たちを出現させることができます。その点で既にラブプラスはARなわけですが、井口氏が言うように、ラブプラスでは単なる「表現としてのAR」以上にARが実現されているのではないでしょうか。実際にラブプラスをプレイし、彼女たちと現実の時間や空間を共にしているプレーヤーにとっては、既に現実は「拡張」されているわけで、現実の景色とCGが重なり合うかどうかは二次的な問題でしょう。それは決してiPhoneアプリが不要という意味ではありませんが、仮にラブプラスという作品が無くて単なる「CG女の子」を出現させるだけであれば、ARアプリの魅力は半減してしまうはずです。

話が逸れましたが、この「1.5人」感がラブプラスの魅力であるとすれば、ラブプラスとは世間一般で語られるような「恋愛の代替品」ではなく、むしろ現代の多くの人々が望んでいるコミュニケーションの理想像なのかもしれません。また最近成功しているソーシャルメディア、例えばツイッターの中などにも、この「1.5人」感を見出すことができるように思います。自分のいる現実空間を、自分が望む範囲で拡張したり、逆にリアルやバーチャルからの侵食を許すことでコントロールされた関係を楽しむ。「1.5人」は、様々な場面に応用できるキーワードなのではないかと感じています。

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