Twitter幼年期の終わり
今朝のTechmemeでトップにランクインしていた、”A VC”ことUnion Square VenturesのFred Wilson氏が書かれた記事が興味深い内容だったので、ちょっとご紹介を:
■ The Twitter Platform's Inflection Point (A VC)
話は1980年代、マッキントッシュが一世を風靡している頃に遡ります。その頃にも多くのベンチャーが登場し、アップルが提供していないハード/ソフトを提供する役割を務めました。中でもFredの友人が経営していた”General Computer”は、初期マッキントッシュ用の外付けハードドライブを販売することで繁盛していたとのこと。しかしアップル自身が数々の「穴」を埋めていくことで、General Computerを始めとした多くのベンチャーが消え去る運命となってしまいました。
そしていま、Twitter時代。Fredは過去の経験と照らし合わせて、こう述べています:
Much of the early work on the Twitter Platform has been filling holes in the Twitter product. It is the kind of work General Computer was doing in Cambridge in the early 80s. Some of the most popular third party services on Twitter are like that. Mobile clients come to mind. Photo sharing services come to mind. URL shorteners come to mind. Search comes to mind. Twitter really should have had all of that when it launched or it should have built those services right into the Twitter experience.
When you talk to a new user, they want to know how to post a photo to Twitter, they want to know "what is this bit.ly thing?", they want to know how to get Twitter on their iPhone. Names like Summize, Twitpic, Tweetie make no sense to them. Of course, without Summize, Twitpic, and Tweetie we would not have the Twitter we have today. They and many other third party products and services filled out the holes in the Twitter product and made it work better.
Twitterプラットフォーム上で行われた初期の活動の多くは、Twitterという製品における「穴」をふさぐものだった。それはちょうど、1980年代にGeneral Computer社がケンブリッジ(※米マサチューセッツ州の都市、MITやハーバード大学があることでも有名)で行っていたのと同じことだ。サードパーティーが開発したTwitter関連サービスとして有名なものといえば、モバイル端末用クライアント、写真共有サービス、URL短縮サービス、検索サービスなどといったものが頭に浮かぶ。そうしたサービスが提供する機能は、Twitter自身が最初から備えておくか、あるいはTwitterを通じて得られる経験に組み込んでおくべきものだったのである。
Twitterに新しく参加したユーザーと話をすると、彼らはたいてい写真を投稿する方法について知りたがったり、bit.lyとは何かという質問をしたり、iPhoneから使う方法について知りたがったりする。彼らはSummizeやTwitpic、Tweetieという存在を理解することができない。もちろんSummizeやTwitpic、Tweetieなどがなければ今日のTwitterはあり得なかっただろう。彼らのようなサードパーティー製製品/サービスはプロダクトとしてのTwitterの穴を埋め、Twitterをより良いものにしてきた。
しかしTwitter自身が強力な存在になり、かつてのアップルのように自社で様々な機能の提供を始めるようになった(あるいはSummizeのような企業を買収するようになった)現在では、状況は新しいフェーズに入ったのだとFredは見立てます。ではそこで何が求められるのか――「穴」を埋める製品/サービスではなく、Twitterというプラットフォーム上でまったく新しい価値や経験を生み出すものでなければならない、というのがFredの答え。もちろんそれは、Twitter社自身が進出してくるようなリスクのある商売をしてはならない、というVCの立場としてのアドバイスでもあるとあると思いますが、不足を補うような思考法から脱却してはどうか?という思いが込められているのではないでしょうか。
その証拠に、記事の最後はこんな前向きなメッセージで締められています:
I believe we are entering a new phase now. Twitter is a global platform, the 33rd largest in the world according to Comscore, with almost 70mm uvs worldwide in February. It is a large company now with the resources to service the ecosystem in ways it never could before. It's hosting its first developers conference, Chirp, in San Francisco next week. And so it's time for Twitter and its developer ecosystem to work together to create entirely new things that will shape the Internet in the coming years. I'm excited to see it happen.
私たちは新しいフェーズに突入したのだと思う。Twitterはグローバル・プラットフォームとなり、Comscoreの調べでは世界中で33番目に大きなサイトとなった。2月にはおよそ7,000万人のユニーク訪問者を記録している。Twitter社は大きな会社となり、以前には不可能だったほどのリソースを割いてエコシステムに貢献することが可能になっている。来週には最初の開発者カンファレンスである”Chirp”がサンフランシスコで行われる予定だ。今こそTwitterと開発者たちが協力して、近未来のインターネットを形作るような、まったく新しいものを創り上げるべきだ。いったいどんなことが起きるのか、私は胸を躍らせている。
じゃ実際にどんな製品/サービスが有望なの?という点については、彼は以下の4つを提示しています(詳しくは記事をご参照下さい):
- ソーシャルゲーム
- 垂直統合型サービス(株価情報サービスのStocktwitsや映画情報サービスのFlixupなど、ある分野での関連サービスを統合して提供するもの)
- 企業向けサービス(CoTweetなど企業が活用するツール類を提供するもの)
- トレンド分析型サービス(TweetMemeやWeFollowなど)
- アクセス解析型サービス(bit.lyやRadian6など)
といったところ。3~5番については、正直「穴埋め」サービスとの境界線は曖昧だと思いますが(Twitter社自身が企業向けツールを提供するという話もありますし)、Fredが「Twitterというプラットフォームを使って新しい価値を提供する」という言葉で具体的にどんなイメージを持っているのか、ある程度明らかなのではないでしょうか。個人的には、この記事は「Twitterが実現したリアルタイム・ウェブという世界をどう活かしていくのか?これからはそれを考えようよ」という呼びかけではないかと感じています。
Twitterの幼年期は終わり、ウェブ自体やユーザーの側に進化が求められる時代がやってきた。格好つけて言えば、そんな表現もできるかもしれません。ユーザー数の頭打ちやブームの終焉を予期する声もありますが、個人的にはFredのように、これから起きる変化の方を期待してみたいと思います。
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