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「エネルギーの通信簿」が普及する日

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スマートメーター導入に関して、契約者から「精度に問題性があるのではないか」という思わぬ苦情にぶち当たってしまっている米PG&E社。この問題によりスマートメーター導入が停滞している状況なのですが、こんな新たな取り組みを行う計画であることが報じられています:

PG&E May Give Consumers Data on Daily Power Consumption; Neighbor Data, Too (Greentech Media)

PG&Eのシニア・ディレクターであるAndy Tang氏がシンポジウムで語った内容について。それによると、スマートメーターによって集められるエネルギー消費状況データを契約者にフィードバックすると共に、

Additionally, PG&E may also give consumers data on the power consumption of similarly situated households -- although the information will be thoroughly scrubbed and anonymized for the sake of privacy -- so that consumers can see how the compare against their neighbors in terms of energy consumption.

さらにPG&Eは、消費者に対して、彼らと似た世帯のエネルギー消費状況データを提供する可能性がある(プライバシーの観点から、提供されるデータは匿名化され、不要な情報が省かれた形になる)。消費者が自分のエネルギー消費状況を、他人と比較できるようにすることが目的である。

ということで、似たような契約者の状況もフィードバックする計画があるとのこと。確かに「先月はこのぐらい使いました」と言われても、「ふーん、こんなもんかな」と感じるぐらいでしょう。しかし「あなたはこのぐらいだけど、他の人はこのぐらい」と言われれば、自分の行動を改善しようというモチベーションへとつながっていくはずです。

実はこのような「エネルギー消費状況を他人と比較できるようにする」という発想、PG&Eが最初ではなく、既に米国内の他の電力会社で取り組みが進められています:

「ご近所ではこんなに省エネしてるのに、あなたは……」とコメントしてくれるサービス、本格始動へ (Polar Bear Blog)

National Grid 社が"Home Energy Report"というプログラムを本格導入する予定とのことですが、こちらはより具体的に、建物の広さや世帯の状況などで比較対象が選ばれることが示されています。確かにワンルームマンションでの一人暮らしと、古い木造住宅での大家族とでは、まったく比較の尺度が異なってきますよね。さらにこのプログラムでは、上位にいる(つまり省エネで健闘している)人々に追いつく方法も示してくれるとのことで、こうなると電力会社から各世帯に通知される「エネルギーの通信簿」とでも呼べるかもしれません。

もちろんこうした「通信簿」に対しては、プライバシー等の面から批判的な意見もあるはずです。しかし個人的には、せっかくスマートメーターによって膨大なリアルタイム・データの収集が可能になるのですから、このぐらいのアイデアに取り組んでみる価値はあるのではないかと思います。少なくとも前月比・前年同月比など、他人ではなく「過去の自分」との比較ぐらいは可能になっているべきでしょう。

ただGreentech Mediaの記事後半でも指摘されている通り、そういったサービスを提供するのが電力会社であるべきか否か、という点は今後の議論を待たなければならないでしょう。電力会社にとっては、自分たちの売上を減らすかもしれないプログラムを、自分たちのコストで行うなどというのは絶対に避けたい状況のはず。しかし社会全体にとっては、エネルギー消費量を減らしていくのが望ましい道です。では第三者がサービス提供行えるように、どのような環境整備(カリフォルニア州のように、スマートメーターデータの開放を義務付けるなど)を行わなければならないのか――あまり悠長に議論している時間はないかもしれませんが、日本でも活発なディスカッションが行われるようになることを期待しています。

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