「省エネする方法」もGoogleが答えてくれる日
ちょうど1年前、2009年2月に Google が発表した"Google PowerMeter"。家庭内の電力消費量を把握・管理できる無料アプリケーションで、使用にあたってはスマートメーターが必要となるため、Google は米国内の電力会社との提携を進めています(参考記事「Googleが電力会社と提携 家庭に消費電力情報を提供」)。発表から1年が経ち、具体的にどのような成果が生まれているのか――興味深い指摘があったので、ご紹介しておきましょう:
■ Google Slowly Adding Users for Energy Tool PowerMeter (Earth2Tech)
It’s still early days for Google’s web-based energy tool PowerMeter. A company spokesperson told us today that Google has “a few thousand users at this point” for PowerMeter. That’s pretty small, but it’s enough to enable Google to start using the collective energy consumption data to make recommendations for how its users can reduce their energy use (see their blog post this week).
PowerMeter(Google が提供している、ウェブベースのエネルギー管理ツール)の普及は、まだ初期段階にあるようだ。Google の広報担当者によると、PowerMeter のユーザーは「現時点で数千人程度」とのことである。これは極めて僅かな数だが、Google にとっては十分な数だった――彼らは集められたエネルギー消費データを解析し、エネルギー使用量を減らすためのアドバイスを発表したのである(今週彼らが公開したブログ記事を参照のこと)。
とのことで、引用文中にもリンクしましたが、Google が「たった数千ユーザー」から集められたデータを解析し、省エネアドバイスを展開している記事がこちら:
■ How much power do you use in the middle of the night? (Official google.org Blog)
"Always On" power is the lowest level of sustained power used during a day-long period. On our energy-monitoring software tool, Google PowerMeter, this shows up as a dark green bar on your power usage graph. We've found that American users, on average, have 589 watts of electrical power being consumed all day long. What items are using all this electricity?
「常時消費電力」とは、一日を通して使われる電力の中で、消費量が最も少ない状態の時のことを指します。私たちのエネルギー・モニタリングツールである"Google PowerMeter"の電力使用量グラフでは、この「常時消費電力」を暗い緑色で表しています。私たちの調査により、米国民は平均で、589ワットの電力を一日中使用していることが判明しました。それではどんな機器にこの電力が使われているのでしょうか?
ということで、興味のある方はこの後のアドバイスまでご覧いただきたいのですが、PowerMeter を通じて得られたデータもまじえて紹介されています。アドバイスはごく簡単であるものの、今後ますます PowerMeter が普及すれば、より詳細な解析が可能になると予感させるには十分な内容でしょう。
Google がこの"PowerMeter"によってどんなビジネスを展開しようとしているのか、まだ明らかにはなっていません(別に Google にとっては何の驚きもないことですが)。一部には Google の他のサービス同様、明確なビジネスモデルなど考えていないか、例によって広告モデルを採用するだろうという観測も流れているようです。しかし今回のように、集められたデータを解析し、「省エネを実現する示唆」という価値を創造する可能性もあるのではないでしょうか。もちろんその価値に誰がカネを出すのか、すなわち消費者が自ら"PowerMeter"利用料金を払うのか(大口需要家なら考えられないことではありません)、はたまた電力会社が顧客サービスの一環として Google から有償提供を受けるのかといった点については検討の余地がありますが、大量のデータを収集・処理するというのが Google の強みの1つであることは間違いないでしょう。
スマートメーターさえインストールされれば、そこから得られるフィードバックを活用して、消費者が自ら省エネ行動に動く(すなわちこうした管理アプリケーションはいらない)という予想もあります。しかし今の検索エンジン同様、Google に質問しさえすれば答えが分かるという状況になれば、手間暇をかけて「どうすれば省エネできるのか」と考える消費者は減っていくことでしょう。「電力会社が省エネを促進するようなアプリケーションなど進んで採用するはずがない」という大きな障害は残るものの、何らかの形でその価値を消費者が認めるようになれば(そして電力会社に Google との提携を迫るようになれば)、「消費者と電力会社の間に"PowerMeter"というレイヤーが入るようになる」と想像するのもあながち夢物語ではないと思います。
【○年前の今日の記事】
■ 「Kindle iPhone アプリ」が現実に? (2009年2月7日)
■ キジサクへの違和感 (2008年2月7日)
■ 210円万年筆は、万年筆の救世主か? (2007年2月7日)