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米軍はTwitterを禁止した。一方英軍は、Twitterを奨励した。

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先日、米軍が Twitter や Facebook などのSNS系サービスの利用を見直すというニュースがありました。実際に海兵隊では、正式な禁止令が出ているそうです:

 

米軍がTwitterなどの利用見直し セキュリティの懸念から (ITmedia エンタープライズ)

 
   

ウィリアム・リン国防副長官はこのたび、軍の司令官や各部門長にメモを送り、SNSの利用を全省内で見直すよう指示を出した。

   

「こうしたツールは、新兵補充や広報業務のほか、隊員の生活の質の向上などの点でも有用であることが分かっており、同盟国や連合国、兵士の家族との情報共有にも役立っている」と同氏はメモで指摘。

   

「だがインターネットをベースとしたサービスであるからには、実装をめぐる問題点や利用上のリスクを把握し、その緩和に努める必要がある」とさらに同氏は続けている。

 

ということで、その利便性は認めるものの、セキュリティ上の懸念からある程度の制限を実施すべきという考え方のようです。一方、英国ではというと:

 

British troops encouraged to use Twitter (Telegraph)

 
   

The MoD said it would actively sponsor soldiers who are willing to tweet or blog about life in the military, with tips for engaging an online audience.

   

英国防省は、軍隊での生活について Twitter に書き込んだり、ブログを書いたりしたいという兵士たちを積極的に支援し、オンライン上で人々と交流する際のアドバイスを提供すると述べた。

 

と、米国とは逆に、兵士に対して Twitter や Facebook の使用を奨励するとのこと。その理由は「家族や友人たちとのつながりが保てるため」。一定の条件下であれば、事前の承認を得ずともこうしたサービスの使用が許可されるそうです。もちろん何を書いても良いというわけではなく、セキュリティやプライバシー、そして軍の評判等に配慮するように求めているそうですから、実質的には米軍内の使用ルールと大差はないのかもしれません。しかし「基本OK」か「基本NG」かによって、兵士の心におよぼす影響はだいぶ違ってくるはずですよね。

 

英国防省の方針についてより詳しく知りたい方は、以下の資料をご確認下さい:

 

Online Engagement Guidelines (※PDFファイル)

 

ガイドラインというと先日の Twitter 戦略テンプレートが思い出されますが、ソーシャルメディアの利用促進が英政府内での潮流になっているのでしょうか。こちらも前回の資料同様、企業内でのソーシャルメディアポリシー立案の際に役立つかもしれません。またガイドラインには「~はするな」といった禁止事項ばかりではなく、

 
   

Know your audience: what level of knowledge will they have? What will they be interested in?

   

読者を知ろう:彼らはどの程度の知識を持っているか?彼らは何に興味を持っているのか?

 

などのように情報発信する上でのアドバイスも含まれていますから、ブロガーにとっても参考になるでしょう。13ページと分量もさほど多くないので、お時間のある方は目を通されてみてはいかがでしょうか。(これも許可が下りれば、翻訳して Scribd にアップしてみたいですね。)

 

繰り返しになりますが、英軍のガイドラインでもセキュリティ等に配慮することを求めているわけですから、実質的には米軍が敷こうとしているコントロールとほぼ変わらない状況なのかもしれません。しかし「応援する。だからルールを守ろう」という姿勢の方が、ガイドラインが守られる確率はずっと上がるのではないでしょうか。普通の携帯電話からでもネットにアクセスしてしまう時代に、一個人をオフラインにし続けることなど到底できることではありません。ならば逆にオンラインにさせることで多くの利益を手にし、一方で自律を求めるという英軍の戦略は、ある意味で非常に理に叶ったものではないかと思います。

 

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