オルタナティブ・ブログ > シロクマ日報 >

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

【企業 Twitter 事例】サウスウェスト航空 vs. デルタ航空

»

昨日は「ダメな企業 Twitter」というマンガをご紹介しましたが、今日は実在の企業 Twitter の事例をご紹介しましょう。舞台は米国の航空業界で、良い例と悪い例の2つが登場します……と言えば、どの会社が登場するか大体想像できるでしょうか:

Twitter Helps Southwest but Hurts Delta (AdAge)

ということで、タイトルの通りサウスウェスト航空(@SouthwestAir)が成功例で、デルタ航空(@DeltaAirLines)が失敗例となります。ご存じの通り、サウスウェスト航空はユニークな経営方針を貫いていることでよく知られていますが、Twitter も積極的に活用しているようです。Bio からしてこんな感じ:

The LUV Airline! Airplanes can't type so @Christi5321 is responding/chatting with you!

サウスウェスト航空です!(※LUVはサウスウェスト航空のティッカー)飛行機はタイプできないので、@Christi5321 が代わりに皆さまとお話します!

ちなみに現時点でフォロワー数は32万人以上、アップデートも約3,000件となっています。では更新内容はどうか、というと。サウスウェスト航空の Twitter 運営ポリシーを象徴するような、こんな出来事が紹介されています:

Shortly after the plane landed, the tweets began pouring in from those who heard the news: "Emergency landing for a Southwest flight ... A one ft by one ft hole in the fuselage is to blame ... yikes." The incident was documented by those on board via Twitpic and YouTube. The airline's lead "Twitterer," Christi Day, immediately began posting updates that included links to an official company release, a statement that all planes would be inspected overnight and news that all passengers on board would be refunded.

"It was important for us to set the tone as soon as we saw those conversations begin online," Ms. Day said. "We were able to distribute factual information to our customers before they saw it on the 10 p.m. news, which is extremely powerful."

飛行機が着陸するとすぐに、ニュースを聞いた人々からの書き込みが Twitter 上にあふれ出した。「サウスウェスト航空の飛行機が緊急着陸した。機体に1フィート四方の穴が開いていたからだって……うへぇ」。この事故は、Twitpic や YouTube などのサービスを通じて、乗客たちによって記録された。サウスウェスト航空の Twitter 担当者である Christi Day は、すぐに Twitter の更新を始め、公式なプレスリリースへのリンクや、全ての機体で点検が行われることと、全ての乗客に対して返金が行われることを発表した声明へのリンクを紹介した。

「こうした会話がオンライン上で始まったらすぐに、その場の空気をつくることが重要です」と Day は述べた。「夜10時のニュースが始まる前に、事実に基づいた情報をお客様に対して提供することができました。これは非常に効果的なことです」。

と、企業にとって歓迎されない出来事であっても、Twitter (および他のメディア)上で積極的に情報開示していることが解説されています。またこれはヴァージン航空(@VirginAmerica)の事例ですが、同様に Twitter を有効活用している航空会社として、こんな話も紹介されています:

With Wi-Fi access on its planes, Virgin America receives and responds to tweets they get from passengers while in flight. "We got a tweet from someone en route to Boston who said he had been ignored on the flight and had some other service issues," Ms. Lunardini said. "Our team met him at the gate in Boston and asked if we could assist with anything or help him further."

ヴァージン・アメリカは機内で Wi-Fi を提供しているため、乗客がフライト中に Twitter への書き込みを行うことになる。「ボストンへと向かう機内で、あるお客様がサービスについての苦情を Twitter に書き込まれました」と Lunardini (ヴァージン・アメリカのコミュニケーション担当者)は述べた。「担当者がそのお客様とボストンの空港で会い、援助を申し出ました」。

ということで、一方的に情報を伝えるだけでなく、利用客の「つぶやき」にも注目することがきちんと行われているようです。Twitter を有効活用している企業では、一般的なユーザーと同様に、Twitter を「会話」のためのツールとして使っているわけですね。

それでは一方のデルタ航空は、というと。まずは Bio ですが:

Onward and upward...

前へ上へ……

ということで、企業のキャッチコピーが書かれているだけ。フォロワー数も約7,800人で、アップデートはたったの30件(今年の5月10日に開設されたばかり)と、こちらもサウスウェスト航空と比べるとちょっと寂しい感じ。さらに書き込みの内容についてですが、先日 Twitter 上でこんな騒動があったそうです:

On the more serious matter of customer service, the airline took a bit of a bruising yesterday on Twitter, following a letter Andy Azula, the creative director at the Martin Agency and the actor in the UPS Whiteboard commercials, wrote to Delta that he posted on his blog and linked to on his Twitter page (he has since taken it down). Apparently Delta delayed Mr. Azula's flight, keeping him and his family waiting at the airport for 13 hours and causing him to miss a number of meetings and a family gathering. The airline didn't offer any type of compensation in the end. Not only did the link get re-tweeted dozens of times, but people started adding their own commentary, such as "Yep. Delta Airlines is screwed if they don't rectify this." The airline did not tweet any type of reply.

カスタマーサービスに関して、より重要な問題があった。昨日、デルタ航空は Twitter 上で手痛い一撃をくらってしまったのである。Marting Agency のクリエイティブ・ディレクターであり、UPS Whiteboard コマーシャルの俳優である Andy Azula がある手紙をデルタ航空に対して書き、それを自らのブログ上で公開、Twitter からもリンクを貼った(彼はその後、当該ページを削除している)。それによると、Azula が乗ったデルタ航空機が遅延し、空港で13時間も待たされた結果、彼はいくつかのミーティングや家族の集まりに出席できなくなってしまった。それに対し、デルタ航空は何の補償も行わなかった。彼が公開したページへのリンクは何度もリトゥイート(Twitter 上で他人の発言を引用すること)されただけでなく、それを読んだ人々が「これに対応できないと、デルタ航空はマズいことになるぞ」といったようなコメントを追加し始めた。

しかしこの件に対して、デルタ航空は Twitter 上では何の反応もしていません。もちろん何らかの対応をオフラインで行っている可能性もありますが、人々がコミュニケーションを行っている場で(その場に参加しているというのに!)沈黙していては、ネガティブな感情を増長するだけでしょう。全ての情報を「Twitter 上でも」積極的に公開し、成功しているサウスウェスト航空とはちょうど180度逆のケースと言えるのではないでしょうか。

もちろん、Twitter だからといって「会話」をしなければならないというルールはありません。ニュースリリースのRSSと連動して、機械的にニュースを流すというのも1つの使い方でしょう。しかし「ソーシャル」メディアに参加していながら、ブロードキャスト型のコミュニケーションに終始しているだけでは、その価値を半分も手に入れることはできません。またデルタ航空の例のように、逆に沈黙が悪影響を生むというケースも考えられるでしょう。これから Twitter に参入しようという企業にとって、サウスウェスト航空(およびヴァージンのような企業)とデルタ航空という2つのケースは、「ブロードキャスト」と「会話」のどちらを選択すべきかを考える上で非常に参考になるのではないでしょうか。

【○年前の今日の記事】

ニュースは現実ではない (2008年7月21日)

Comment(0)