そろそろ「チャリティー番組つくろうと思ったけど、その予算を寄付することにしました」という企業が出てきても良いかもしれない。
夏休みです。日本の夏休みといえば、チャリティー番組が連想されるわけですが(超個人的感想ですみません)、「番組作る予算を寄付すればいいのにねぇ」などと感じてしまったことは誰にでもあるのではないでしょうか。もちろん番組を作らなければ「寄付をすること」「寄付を呼びかけること」すら伝わらなくなるので難しい相談なのですが、ソーシャルメディアの時代なら、PRの予算を大幅にカットしてしまうことが可能かもしれません。次の例をご覧下さい:
■ Donated guerrilla campaign promotes Salvation Army (Springwise)
米ポートランドで Salvation Army (救世軍)が行ったゲリラキャンペーンについて。その名も"This Ad Cost Nothing"(この広告にはコストがかかっていません)というものなのですが、文字通り非常に低コストで行われたそうです:
Part of the campaign included broadcast time and print ad space donated by traditional media; the majority, however, employed less conventional tactics. Pizza boxes and coffee sleeves were transformed into ad space for displaying the Salvation Army's logo and URL, for example, as were bathroom mirrors at local restaurants—with the help of a little grease paint. VIA employees and willing friends parked their intentionally dusty cars in downtown Portland, with the logo and slogans written on their back windshields, while dozens of shops sported the logo on their own windows as well. Painted rocks, tarps and tennis court floors were also among the more than 5,000 "creative units" included in the campaign.
このキャンペーンの一部には放送メディアや紙媒体など、既存メディアによって無料で提供された広告スペースが使われたが、大部分はこれまでにないような戦術が用いられた。ピザの箱やコーヒーのスリーブに救世軍のロゴとURLを入れたり、地元レストランのトイレにある鏡にグリースで広告を書いたりといった手法である。VIA(※今回のキャンペーンを企画した地元のエージェンシー)の社員や有志の人々が、わざと汚くしたクルマをポートランドのダウンタウンに駐車し、そのリアガラスに(汚れを取り除くことで)救世軍のロゴとスローガンを描くという手法や、お店の窓に同じロゴとメッセージを描くという手法も取られた。その他にも石に色を塗る、防水布やテニスコートに描くなどなど、5,000を超える「クリエイティブ・ユニット」がこのキャンペーンで活用された。
実際の「広告」がどんなものだったかはこちらの記事で写真が確認できるのですが、「この広告によって浮いた予算は有効活用されます」というようなメッセージが(何パターンかで)書かれていて、シャレが効いています(以下はリアガラスのホコリの上に描かれた広告の例):
従来型メディアにも広告を出したとはいえ、こんな地味な手法で宣伝になるのか――などという心配は、最近のクチコミマーケティングの事例をご存じの方々の心には浮かばないと思いますが、ご想像の通り。地元で実際に目撃した人々を中心に、ネットに様々なブログ記事や写真がアップされています。それを見た人がまたネットで話題にする、という行為も行われたことでしょう。正式な数値は分かりませんが、広告費を(救世軍本来の目的である)救済活動に回しつつ、自らの存在もPRするという目的はある程度まで達成されたはずです。
例えば「今年は○○時間テレビをやりません!」というウェブページが1つあるだけでも、それを中心に大きなクチコミがネット上で巻き起こるのではないでしょうか。もちろんそこから募金活動へとつなげていくためには別の戦術が必要になりますが、認知という点ではテレビ放送24時間分も必要ないはず。そろそろチャリティー番組に変わる新しい手法が、ソーシャルメディアを中心に企画できるのではないかと思います。
【○年前の今日の記事】
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