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「ネットいじめ」から「ネットひいき」へ?

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ネットを使っていじめを行う「ネットいじめ」が問題になっているのはご存知の通り。解決の糸口は見えていませんが、今後はそれに加え「ネットひいき」が問題になるかもしれません。米国でこんな動きが広まっているそうです:

Teacher-student Web friendships restricted by Lamar school board (clarionledger.com)

ミシシッピー州で、生徒と教師がSNS上で友だち登録することを禁止する教育委員会が増えている、というニュース。SNSを利用することを禁止するものではないのですが、そこで先生と生徒が交流したり、テキストメッセージを交わすことを禁止するという内容。ただしどうやって違反行為をモニターするかについては、まだきちんと検討されていないようです。

なぜこのようなルールが設定されたのか?という点ですが、特に引き金となった事件はないようです。ある教育委員会の幹部は次のように説明しています:

"The only intent is to limit the personal communication between teachers and students. We don't need to let it cross the line between professional and personal communication."

「唯一の意図は、教師と生徒の間での個人的なコミュニケーションに制限をかけたい、ということだ。仕事上でのコミュニケーションと、個人的なコミュニケーションの間の線を越えることを許してはならない。」

とのこと。ちなみに同種のルールを設置、もしくは設置を検討している教育委員会は現在3つのみだそうですが、ミシシッピー州政府がルール設置を各学区に呼びかけているようです。

さて、以前から「Mixi で上司から友だち申請されたんだけど、マイミクにしたものかどうか悩む……」なんてことが話題に上がっていましたが、確かに先生と生徒の間で「友だち登録」するのは是か非かというのも難しい問題です。積極的に先生と友だち登録しようという生徒は少ないでしょうが、仮に先生が一部の生徒とだけ「友だち」になり、生徒の利益になるような行為を行ったらどうなるか。それはネットいじめならぬ「ネットひいき」とでも呼ぶべき状況を生むかもしれません。

もちろん全ての「教師と生徒の間の『友だち』関係」が問題だ、というわけではないと思います。既に現場の先生の中で、SNSを活用して生徒との信頼関係を構築されている方もいらっしゃるでしょう。全ての生徒に平等に接するなんてそもそも無理だ、便利なツールが登場しているのだから積極的に活用すればいいじゃないか――という意見にも一理あるのではないでしょうか。

問題は、ネットいじめ同様に「ネット/ウェブが善か悪か」という点にではなく、教師が生徒との関係をきちんと考えているかという点にあるのではないでしょうか。問題のある教師は、ネットか現実かを問わずひいきを行うはず。その中でSNS上での交流を禁止したとしても、結局は同じことでしょうし、また別のウェブサービスを通じて「ネットひいき」を行うようになると思います。だから「ネット上での交流禁止!」を打ち出すよりも、先生の意識改革に取り組んで欲しい……と思うのですが、「悠長なことが言ってられるか、まずは禁止しろ!」という声が大きくなってしまうんだろうなぁと感じた次第です。

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