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iPhone アプリ、開発者も販売中

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いよいよ新しい iPhone、「iPhone 3G S」が発表になりましたね。毎度のこととはいえ、今日はこの話題でネットが持ちきりのようです:

高速化した「iPhone 3G S」、6月26日発売──OS 3.0は6月17日配信 (ITmedia +D Mobile)

「S」は宇宙(スペース)のス、じゃなくてスピードのSだそうで、様々な機能が高速化されたことが最大の特徴とのこと。またカメラの性能も向上し、オートフォーカスや動画撮影などの機能も追加されています。さらには音声認識機能、電子コンパス、音声インターフェースなどなど、盛りだくさんのアップデートとなりました。

しかし個人的に気になっているのが、本体よりも iPhone OS 3.0 の方。既にプレビューイベントで発表済みですが、重要な機能追加がなされています:

開発者向けには、アプリ内課金や月額課金など、新たな課金方法が用意されたことや、Dockコネクター経由で周辺機器と通信するアプリが開発可能になったことなどがOS 3.0の大きなトピックとしてプレビューイベントでも紹介されていたが、今回の講演では改めてこうしたメリットを開発者向けに訴求。実際にアプリを開発しているデベロッパーが登壇してそのメリットや開発中のアプリを披露した。Appleは、アプリ開発や周辺機器開発により大きな自由がもたらされることで、さらに高度なアプリや周辺機器が生まれてくる可能性を示唆した。

既に iPhone/iPod touch アプリが大きな市場を形成しつつありますが、その背景にある要因の1つが「アプリを売って儲ける」という行為が可能であるという点でしょう。今回の機能追加で新たな課金モデルが可能になることで、さらに様々な「儲け方」が生まれるはず。OS 3.0 を追い風として、iPhone アプリ市場が一層拡大していく確率は高いのではないでしょうか。

そうなると問題になるのは、開発者が足りるのかという点です。もちろんカネのあるところに人は現れるものですから、既存のプログラマーたちが iPhone アプリ市場に転向するという流れが続いていくはずです(そっぽを向かれた分野にとってはたまったものではありませんが)。また以前、「スタンフォード大学の iPhone 講座、7週間で100万ダウンロード達成」というニュースをご紹介したように、新たに開発者の道を歩もうという人も増えてくるでしょう。しかし昨年11月の時点で、iPhone アプリの開発者需要が半年で5倍に膨れあがっていたという話もありますし、いずれは優秀なプログラマーを取り合う(iPhone アプリ市場内で、もしくは隣接する分野の間で)という現象も起きてくるのではないでしょうか。

昨日の New York Times に、こんな記事が出ています:

Apps Are Booming as Companies Seek a Place on Your Phone (New York Times)

Developers of programs for the iPhone have already managed to make a decent living selling hundreds of thousands of copies of games from their living rooms or garages.

But now, a new way to profit from writing software for the iPhone is emerging: Sell the apps, then sell your company.

iPhone 向けプログラムの開発者たちは既に、リビングやガレージで開発したゲームを何千何百と売ることで、結構な生活を送ることに成功している。

しかしいま、iPhone 向けプログラム開発から収入を得る、新しい方法が生まれつつある。アプリを売って、さらに自分の会社も売るという方法だ。

とのことで、最近 iPhone アプリ開発を生業としているスタートアップ企業が、既存企業に買収されるという例が生まれ始めていることをレポートしています。OS 3.0 の登場により、その流れが加速する可能性もあるとのこと。なんだか「見込みのある Web ベンチャーを Google が買う」みたいな話ですが、iPhone アプリが大きなビジネスになるとあれば、当然出てくる動きでしょう。もちろん大手であればヒットするアプリを作れるというわけでは必ずしもありませんが、集約によってクオリティの向上が進み、優れたアプリ開発にはますますリソースが必要になるという流れが生まれるかもしれません。

そのうち「優秀なアプリ開発者を探す iPhone アプリ」が出てくるかもしれない――などという冗談はさておき、iPhone および App Store の進化が続くことで、プログラマー市場にも少なからず影響を与えることでしょう。自分がプログラマーなのか、経営者なのか、はたまた開発を頼むクライアントなのかによって意味するところは変ってくると思いますが、海の向こう側の動きに注目していても面白いかもしれません。

【○年前の今日の記事】

秋葉原通り魔事件とデジタル野次馬 (2008年6月9日)
なぜコンサルタントはお金を取るのか (2006年6月9日)

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