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読み終わった電子ブック、誰かに贈れるとしたら?

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Amazon の Kindle が躍進していることで、最近活気づいている米国の電子ブック関連市場。ITmedia でも報じられていますが、また新たな電子ブックリーダーが登場しました:

Kindleのライバル? “クール”な電子書籍リーダーが間もなく登場 (ITmedia News)

英国の Interead 社が発表した"COOL-ER"という端末がそれ。(Kindle の売りの1つである)無線通信機能やキーボードがないなど、「Kindle のライバル」と成り得るかはまだまだ未知数ですが、Kindle より安くて薄型軽量、電池が取り外し可能、そして名前の通り「クール」なデザイン(iPod のマネという声もありますが)など、新しい魅力を備えた電子ブックリーダーであることは確かなようです。

cool_er

そして電子ブックに忘れてならないのが、当然ながら専用オンライン書店の存在。いくら最先端の電子ブックリーダーとはいえ、コンテンツがなければただのハコ……ということで、現時点で75万点が用意された"CoolerBooks"というサイトもオープンしています。この CoolerBooks について、New York Times で興味深い報道がなされています:

Don’t Quit That Kindle Just Yet (New York Times)

Above all, the Cool-er’s books are far less restrictively protected than Amazon’s or Sony’s. For starters, you can read one on your Mac or PC. According to Interead, starting this fall, you’ll be able to sell books you’ve written on Coolerbooks.com; you’ll keep 50 percent of each sale.

And most intriguingly of all, you can share a Cool-er book you’ve bought with four other people. Think family, buddies or book club.

That’s a huge deal. It takes a step toward addressing what may be the biggest remaining e-book gotcha: you’re stuck with your books forever. On the Kindle, for example, once you’ve finished reading a book, you can’t pass it on, sell it or even donate it to a library.

そして何よりも重要な点は、Cool-er の電子ブックにかけられている規制が、Amazon や Sony のものよりもずっと緩いということである。まず始めに、Cool-er の電子ブックは自宅の Mac や PC でも読むことができる。さらに Interead によれば、この秋から、Coolerbooks.com 上で自分の作品を売ることが可能になるそうである(料金の50%が作者の収入となる)。

さらに興味深いのは、買った本を自分以外の4人と共有することができるという点。家族や友人、読書クラブに贈ることができるというわけだ。

これは大きな魅力だ。電子ブックに残された最大の課題――購入した本はずっと保管し続けなければならない――を解決するという点で、一歩先んじている。例えば Kindle では、読み終えた本を誰かにあげたり、売ったり、ましてや図書館に寄贈したりといったことは不可能である。

読み終わっていらなくなった電子ブックをどうするか。もちろん電子ブックには実体がないわけですから、置き場所に困るということはありません。しかし紙媒体の本で行っていたように、友人にあげたり、古本屋に売ったり、保育園に贈ったりといったことをしたいというニーズは存在するでしょう。またある程度流通しやすくするということは、電子ブック全体の普及という点にとってもプラスのはずです。

もちろん新たな電子ブックリーダー1台が登場したぐらいで、業界全体が変るはずもありません。また New York Times のレビューによれば、COOL-ER はまだまだ操作性が悪いようですし、75万点が購入可能といってもハリー・ポッターシリーズなどの大作が含まれていないとのこと。しかし「COOL-ER で出来ることがなんで Kindle で出来ないの?」という声が上がるようになれば Amazon としても黙ってはいられないはず。健全な競争が行われることによって、利用者に価値が生まれるような状況になることを期待したいですね。

【○年前の今日の記事】

Google Earth で何を監視する? (2008年5月29日)
失敗は結果ではない (2007年5月29日)
妄想力の効果 (2006年5月29日)

< 余談 >

ちょうどいま、オルタナ事務局で「拝啓、Amazon様」というテーマでエントリが募集されているのですが:

拝啓、Amazon様 ~ 番長と遊ぼう! (事務局だより)

僕のリクエストはもう、何といっても「Kindle を日本でも展開して!」これに尽きます。通信キャリアとの提携が必要だって?それなら ITmedia つながりで某白犬様の会社や、MVNOならUQコミュニケーションズという選択肢もあるじゃないですか……何とか実現して欲しいなぁ。

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