居住空間にとけ込むロボットたち
松尾さんは初音ミクを想像したらしいですが、僕は素子が操るハダリ型ロボット(バトーにジャケットをかけてもらう前)を想像しました……って何のことか全然分からないですね(元ネタは文末に)。ともあれ、ネットでも話題騒然、新たな人型ロボットが登場したというニュースです:
■ 身長158センチ・超リアルな日本人女性型ロボット、ファッションショーに出演へ (ITmedia News)
産業技術総合研究所が開発した新型ロボット「HRP-4C」に関する記事。ちなみに産総研の公式発表ページはこちら:
■ 人間に近い外観と動作性能を備えたロボットの開発に成功 (産総研プレスリリース)
産総研自らが認めていますが、ポイントはやはり「リアルな頭部と日本人青年女性の平均体型を持つ」という点でしょう。この「リアルな頭部」が俗に言う「不気味の谷」を超えたかどうかという点ですが、静止画はそれほど違和感がないものの、ニュース等で動いている頭部のアップを見ると、個人的にはやはり人間との違いの方が感じられてしまいました。またリアルな頭部に銀色のボディ、という点も違和感を感じた一因かもしれません。
しかし表情はともあれ、ロボットの実生活への導入に一歩近づいたと感じられる点があります。それは身長と体重。公式発表によれば、それぞれ 158cm/43kg となっており、小柄な女性とほとんど変りません。HRP-4C のベースとなった Promet (身長154cm、体重58kg)、特許技術を借用した本田技研の ASIMO (最新型のスペックで身長130cm、体重54kg)と比べても、身長が高くなったにも関わらず体重が大幅に減っていることがわかります。
身長や体重など些細なこと、と思われるかもしれませんが、ロボットが実生活に入ってくる際には重要なポイントになります。僕らが住んでいる家は、平均的な人間が暮らすように作られているわけですから、そこから大きく逸脱するような存在は十分に活動することができません。例えば身長130cmの ASIMO にとって、台所の上の棚にしまわれているお皿を割らずに取り出すことは非常に難しい任務になるでしょう。逆に体重43kgの HRP-4C ならば、転んで本箱などにぶつかってしまった時でも、対象物を壊さずに済むでしょう(むしろ体重○○kgの僕の方が気をつけなければならないかも……)。さらに Promet に比べて凹凸の減った HRP-4C は、より「人間の居住空間」にとけ込むことが可能になっているはずです。
ただこの「ロボットが人間の居住空間に合わせるようになる」という方向性ですが、180度逆の方向へと向けても良いことが指摘されています:
■ 作家・瀬名秀明とロボット ~攻殻機動隊の世界は実現するか~ (ASCII.jp)
この記事の7ページ目で、脚本家の櫻井圭記氏(攻殻機動隊S.A.Cシリーズ等の脚本を手がけられた方。『フィロソフィア・ロボティカ 』という本も書かれています)がこんなことを述べられています:
櫻井 非常に僕もそう思います。ロボットを想定した建築物もあるだろうと。車はこんなに普及しましたけれども、逆に舗装された道路以外は、ほぼ走れない。それが街の風景を変えていくというか、道路を造っていくわけですよね。
だから、ロボットが過不足なく稼動できるような環境作りということが、どんどん建築の方で動きが出て、ロボットもそっちに適合していって、僕たちもその空間に合わせて生きていくという……そういうことには、なっていくような気はしますね。
つまりゴールは「人間とロボットが共存する」ということなのだから、ロボットに合わせてもらうのではなく、人間の住環境の方を変えてしまうという手段もあるはずだ、と。確かにその方が、技術の発展を待たずにロボットを実生活に導入できることになります。例えば介護の分野など、人手が今すぐにでも求められている場面では、「いま使えるロボットに合わせて建物の方をリフォームする(床を強化したり、扉を広くするなど)」という動きが出てくるかもしれません。ちょうど車椅子に対するバリアフリー対応のように。
そうなると、「HRP-4C と暮らすためのリフォーム」を専門に引き受ける住宅業者なんかも現れたりして(ちょうどサイバーダインに大和ハウスが資本参加しているように、ロボット産業を支援する住宅業者も出てくるでしょう)。気づけばロボットの側だけでなく、人間の社会全体がロボットの側に歩み寄っていた、ということが現実になる可能性は高いのではないでしょうか。
写真の人形がハダリです。って、ますます訳分からないですね……。