「世界は変った。我々も変らねばならない」
昨日は栗原潔さん、吉川日出行さんとご一緒させていただき、ソフトウェアジャパン2009にて講演とパネルディスカッションを行ってきました。途中自分のPCがフリーズしてしまい、栗原さんのPCを急遽お借りするという失態を演じてしまいましたが(栗原さん、ご迷惑をお掛けしました)、他の講演も合わせて楽しませていただきました。
さて、講演のために出し惜しみしていた、というわけではないのですが。昨日の講演でも紹介し、いつかブログでも書こうと思っていた調査資料があります。それがこちら:
■ Building the Web 2.0 Enterprise: McKinsey Global Survey Results (The McKinsey Quarterly)
タイトルでお分かりかと思いますが、Web 2.0 の導入傾向について、マッキンゼーが世界各地の主要企業に対して行ったアンケート結果です。かなり興味深いのでご一読いただきたいのですが、Exhibit 6 でこんな結果が示されています:
Web 2.0 ツールや技術によって、あなたの会社の経営方法や、組織体制に変化がありましたか?
[ Web 2.0 導入に高い満足度を示している企業 ]
- 顧客や協力会社とのコミュニケーション方法が変った:26%
- 人材を雇用・確保する方法が変った:27%
- 社内に新しい役割や機能が生まれた:33%
- 組織体制が変った(フラット化された等):33%
- 経営方法や組織体制に変化は無かった:8%
[ Web 2.0 導入に低い満足度を示している企業 ]
- 顧客や協力会社とのコミュニケーション方法が変った:12%
- 人材を雇用・確保する方法が変った:13%
- 社内に新しい役割や機能が生まれた:9%
- 組織体制が変った(フラット化された等):13%
- 経営方法や組織体制に変化は無かった:46%
上のテキストではなく、元のグラフの方を見ていただければ一目瞭然だと思いますが、Web 2.0導入に満足している企業・満足していない企業の間では「変化が無かった」に38ポイントもの差があります。1つの調査結果だけで結論に飛びつくのは危険ですが、これは「Web 2.0 の価値を十分に引き出すためには、それに合わせて経営スタイルや組織構造も変化させなければならない」ことを示している可能性があるのではないでしょうか。
そもそも Web 2.0 という概念自体、テクノロジーの進歩だけでなく、思想の変化という面を強く持っていました。そしてそれを当たり前のものとして駆使する世代は、これまでの世代とは異なる価値観や行動スタイルを持っていることが、様々な場面で論じられるようになっています(以前ご紹介した"Grown Up Digital"もその一つですね)。Web 1.0 から 2.0 への移行は、単なる技術のバージョンアップという以上に、新しい文化への移行であるという意識で捉えられなければならないでしょう(その意味で "Web"2.0 という言葉は誤解を招きやすい表現だと思います)。
残念ながら Web 2.0 自体が「IT業界のバズワード」的な捉え方をされてしまい、議論はかなり下火になってきています。しかし今後も「Web 2.0 という変化に合わせ、社内文化・社内構造をどう変化させる」という点を中心に、議論が行われる必要があるのではないでしょうか。そんな意味を込めて、そして少しカッコつけるために、昨日の講演のラストでは以下の言葉を引用しました。先日行われた、バラク・オバマ大統領就任演説中の一節です:
“The world has changed and we must change with it.”
「世界は変った。それに合わせ、我々も変らねばならない。」