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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

フラット化された世界+デジタルネイティブ=?

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昨夜は某米国人起業家とのお食事会に参加、のはずが体調を崩してしまい、泣く泣く欠席してしまいました。そんなわけでふて腐れて寝ていたのですが、ちょうど寄10時に目が覚めたので、NHKスペシャル『デジタルネイティブ~次代を変える若者たち~』を鑑賞(はてなが取材を受けたとのことで、少し前からネット上で話題になっていた番組です)。少し感想を書いておきたいと思います。

番組は、ネットを自在に活用して、国境を越えて友人をつくる子供たちの話から始まります。チャットやウェブカムを利用して、ネットでしか会ったことのない人々と交流する少年・少女と、その行動を理解できずに不安げに見つめる親の姿。生まれたころからデジタル機器やインターネットに囲まれ、何の不思議もなくそれを使いこなす世代――それがデジタルネイティブである、と(定義についてはこちらの記事もご参照下さい)。

次に登場したのは、米国でカードゲーム会社を立ち上げた13歳の少年(インドもしくはネパール系のようです)。彼はネット上で科学知識を拾い集め、それを簡単に学べるカードゲームとして展開、冗談ではなく本気で事業として成功させようとしています。彼はSNSを通じて複数のデザイナーとコンタクトを取り、カードゲームに使うイラストやロゴをデザインしてもらったのですが、そのデザイナーの1人が「自分のボスが13歳の少年だと知って驚いた」とコメントしています。

他にもはてなの近藤社長(本来の「デジタルネイティブ」の定義から言えば、範疇には入らないはずなのですが)やはてな社員たち、ウガンダでエイズ防止運動にネットを活用する若者、さらにはネット上で自分の裸体を公開し、世界中に1,500人あまりの顧客を持つ「グローバル企業」を作り上げた少年などなど。世界中で活動するデジタルネイティブたちの姿が紹介され、「彼らが世界を変えるかもしれない」的なメッセージで番組は終了しました。

内容はザッとこんな感じ。確かに個々のエピソードには面白いものもあったのですが、結論から言って、個人的には少し物足りない感じがしました。ネットを通じて世界中の人々が、年齢や人種によって差別されることのない対等な関係でつながっていく、という話であれば『フラット化する世界』で既に語られています。どうも今回の番組では、「世界がフラット化したことの衝撃」「年端の行かぬ子供たちがネットを活用していることの衝撃」の2つがごちゃまぜになっていたのではないでしょうか。それが個々には面白い事例を取り上げつつも、ツッコミが足らないように感じた原因ではないかと思います(あくまでも個人的には、ですが)。

ガートナーの定義によれば、「16歳以下の子供で、生まれた時からITに慣れ親しんでいる」のがデジタルネイティブであり、それより上の年代でITについて勉強しようと努力しているのが「デジタルイミグラント」(digital immigrant、デジタル移民)です。僕はまさにデジタルイミグラントなのでしょうが、そんな人間であっても、世界がフラット化しつつあるという実感を肌で感じています。従って、「ITを駆使する人々が世界をフラット化しつつある」という状況にはもう一歩先がある――つまり生まれた時からITを駆使している世代が20代~30代になり、「既にフラット化された世界」で本格的に活躍するようになれば、いま以上の革命が起きるはず……といったところまで掘り下げて欲しかったなぁ、という勝手な感想を抱いた次第です。

実はNHKの『デジタルネイティブ』番組ホームページに「デジタルネイティブ度チェック」なるものがあるのですが、僕ですら80%を記録することができました。恐らくいまの10代前後の世代は、この程度では済まないはず。NHKさんにはぜひ今後も取材を続けて欲しいと思います(皮肉を込めるつもりは全く無く、本気でそう願っています)。

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