日曜研究者の時代
以前は限られた人々しか利用できなかったデータ/資料に、ウェブを通じて誰もがアクセスできるようになるという事例が増えています。先日ご紹介した「Google Earth で数百の新しい遺跡を発見」というのもその一例ですが、「最古の新約聖書」なるものまでオンラインで閲覧可能になったとのこと:
■ 最古の新約聖書、オンラインで公開へ (ITmedia News)
Codex Sinaiticus というサイトについて。直訳すれば「シナイ写本」という意味になるのですが、その名の通り、シナイ写本と呼ばれる新約聖書の高解像度画像が公開されています。西暦350年ごろに書かれたものとみられているそうですから、実に1600年以上昔の本になります。オンラインでなければ、とても万人に触れさせることはできない代物でしょう。(ただ残念ながらサーバが不安定らしく、何度かエラーが出てしまいます。)
もうちょっと近代ですが、同様に貴重な資料が公開されているのがこちら。進化論で有名なチャールズ・ダーウィンの残した文献・資料などを集めたサイトです:
■ The Complete Work of Charles Darwin Online
(同サイトで公開されている画像の例)
ケンブリッジ大学のダーウィン・アーカイブがコンテンツを提供したもので、「ビーグル号航海記」や「種の起源」等が公開されています。また1980年代に盗まれ、いまも行方の分からない資料も含まれているとのこと(マイクロフィルムで保管されていたものをデジタル化したそうです)。なんとこのプロジェクトでは、2009年をめどに、ダーウィンが遺したほぼすべての資料・文献をデジタル化して公開する予定なのだとか。
こうした資料やデータが無数の人々に対して公開されることによって、これまで気づかれていなかった事実の再認識や、全く新しい発見が生まれるかもしれません。Google Maps/Earth で考古学者でなくても遺跡探索に(成功の確率はごく低いにせよ)参加できるようになったように、日曜大工ならぬ「日曜研究者」的な楽しみ方を始める人が増えるのではないでしょうか。そして「もう重要な発見は専門家によって行われた、素人が貢献できることは何もない」などと言い切ることもできないでしょう。
タイミングが良いことに、Google の新サービス"Knol"が一般公開されました(参考記事)。このサービス、Google 版ウィキペディアなどと評されていますが、個人的には「オンラインで論文を共同執筆し、公開された論文を皆で評価するためのプラットフォーム」という捉え方もできるのではないかと考えています。オンラインで公開されているデータを基に日曜研究を行い、Knol を使って成果を広く世に発表する……なんて話がどんどん出てくると楽しいですね。