主張をする、ということ
先日もご紹介した「平城遷都1300年祭キャラクター騒動」ですが、まだまだ波紋は続いています。ネットで反対活動が行われる一方、「これはこれでありなんじゃない?」という意見の方も増えてきているようで、先日 Twitter では「アイコンに鹿の角を付ける」という祭まで起きました(発信源であるにぽたんさんのブログで詳しく解説されています)。またこのキャラクターをデザインした彫刻家・籔内佐斗司さんが、ご自身のサイトで反対意見へ回答されています:
ここに書かれている反対意見は、実際に藪内さんにメールで届けられたものとのこと。送信者の方の了承は取ったのか、取ってないとしたら無断で掲載していいのか?という問題はあるのですが、その点はひとまず脇に置いて話をさせていただくと、寄せられた意見の厳しいこと。例えば冒頭には、20代女性からのこんなメールが:
あなたプロなんですよね?
自分の作風の向き不向きとかもプロなら分かると思うのですが。
そんな事も理解出来ないならプロ失格だと思います。
失格ですね…。
しかも、あんな気持ち悪い絵を描いて500万貰ったって本当なんですか!?
本当だとしたら詐欺ですね。
500万円奈良に返して下さい。
指摘するまでもないですが、今回のキャラクターは「平城遷都1300年記念事業協会」がコンペで選んだもの。藪内さんが押しつけたものではありませんし、500万円を手にしたのも詐欺などではありません(僕は詳しくないのですが、著作権を500万円で買い取るというのはまぁ妥当な線、という意見もありました。ちなみにMSN産経ニュースによれば「前回の仏の手をイメージしたシンボルマークには1300万円をかけた」とのこと)。従ってまったくお門違いな非難なのですが、藪内さんはその一つ一つに対し、丁寧な反論をされています。
もし僕が藪内さんの立場だったら、怖くてひとまずブログ/HPを閉じ、「僕が間違ってました」と500万円も返上してしまうでしょう。正直、寄せられたメールを読んでいるだけで不快になり、最後まで読むのを放棄してしまった程です。しかし藪内さんは卑屈になることはなく、謝るべきところは謝り、正しいと思うところは正しいと主張されています。よほどの精神力というか、忍耐力がなければできないことでしょう。藪内さんはおもしろおかしく仏像を扱っているのではなく、仏像製作について深い知識をお持ちだということが、ご自身のホームページや様々な紹介記事からうかがえます。自分の作品や作風に対する自信といったものも、謂れなき非難に立ち向かう原動力になっているのかもしれません。
比べたら怒られてしまいますが、僕もブログという形で、日々意見を発信している者です。いつ何時、僕の考えていることに対して、嵐のような非難が巻き起こらないとも限りません。そのとき、嵐を避けようとして一切を捨ててしまうか、藪内さんのように信念を保ちつつ相手と対話していくことができるかどうか。おおげさかもしれませんが、主張をするには、そんな覚悟を常に持っていなければならないと感じた次第です。