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「アイコン>実体」の時代

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奈良の「平城遷都1300年祭」のマスコットキャラクターが大変なことに……というニュース、ネットで騒ぎになっていたのでご存知の方も多いと思いますが、ついに今朝のワイドショーでも紹介されていました。何それ?という方のために、念のため参考記事を:

奈良「ご当地キャラ」にネット騒然 「ひこにゃん」超えるインパクト!(J-CASTモノウォッチ)

あえて画像は置きませんので、リンク先の記事を確認してみて欲しいのですが、とにかくインパクトのあるキャラです。愛知万博の「モリゾー」「キッコロ」や、彦根市の「ひこにゃん」等のかわいい路線に真っ向から対立する(?)、「キモかわいい」路線のキャラです。しかしあまりにもインパクトがありすぎたせいか、このキャラをめぐって賛否両論が巻き上がっているとのこと。反対派の方々は「平常遷都1300年祭を救う会」というサイトを立ち上げ、キャラクターの白紙撤回を求めています(ちなみにこのキャラが市民との相談無しに採用された、という選考過程についても批判されているようです)。

個人的には、(このキャラを選んだ方々が意識していたかどうかは別にして)「キモかわいい」路線もアリではないかと思います。例えば、こちらも最近取り上げられることの多い「ドアラ」。中日ドラゴンズのマスコットキャラクターであるドアラは、昨年のドラゴンズ優勝や動画サイトへの投稿などの影響により人気に火が付き、『ドアラのひみつ かくさしゃかいにまけないよ』という本まで出版されるほど。昨日の日経MJに特集が組まれていたのですが、それによれば「野球を見たことがない」という若い女性にまで人気とのこと。だから奈良のキャラも、というわけではありませんが、「かわいいキャラを使えば成功する/キモいのは論外」などとは一概には言えない、ということでしょう。

当然ながら、「販促にイメージキャラクターを使う」という発想自体は新しいものではありません。IT業界でもボウズマンやフォクすけ、初音ミクなどなど、いくらでも例を挙げることができます。しかし最近の傾向として、キャラそのものが「実体」以上に注目されるということが増えてきているように思います。考えてみれば、国や自治体が主催するイベントに、ヌルいキャラが採用されるということはこれまでもよくありました。恐らく奈良県の関係者の方々は、これまでと同じノリでキャラクターを選考してしまったのでしょう。それがここまで大きな騒動になってしまったというのは、実体よりも「アイコン」であるキャラクターの方が重要となる時代、を象徴しているのではないかと思います。

なぜアイコンの重要性が高まってきたのか、については様々な理由があると思いますが、個人的にはやはりCGMの影響が強いのではないかと思います。キャラクターは実体がなければ生まれないものですが、生まれてしまえば実体から切り離しても存在可能で、しかも実体以上に使いやすい素材となります。例えばドアラだって、「中日ドラゴンズのキャラクターで云々」ということを伝えなかったとしても、動画サイトでおかしな挙動をしているのを見せるだけで「かわいー!何これ?」ということになるわけですね。逆に言えば、本来は「本体」が提供していたキャラの性格や存在意義を、人々がネットを通じて勝手に補充してくれるようになったことが「キャラクター全盛の時代」をもたらしているのではないでしょうか。

ということで、平城遷都1300年祭のキャラも、話題を呼ぶという点では一定の役割を果たしていると思います。さらに市民が自由に使えるようにして、愛されるキャラ付けを集合知的に行えば、「キモい」という評価が「かわいい」に変わっていくのではないでしょうか。もちろん白紙撤回するというのも選択肢の一つだと思いますが、無難なキャラを選んだ結果PR効果も失われてしまった……というリスクも考えておくべきでは、と勝手なことを感じています。

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