「第3の視点」を持つリーダー
表紙の「イヌを導くネコ」の写真と、挑発的なタイトルに惹かれて買った『なぜ、あなたがリーダーなのか? 』を読了。普段はリーダー論系はあまり読まないのですが、それだけに様々な視点を得ることができました。
中でも「なるほど」と感じたのは、三元型リーダーシップという発想。これはスウィンバーン工科大学のアリスター・マントという方が提唱されたものだそうで、その対極にある「二元型」の概念も含めて解説を引用してみると:
前者「二元型」に属する人は、自分と他人との関係に閉じて物事を捉える。それゆえに、自分をより有利にすべく行動する。つまり、相手をそそのかす。あるいは、コントロールしたり支配したりする。そんな欲求に突き動かされやすくなる。
後者「三元型」に属する人は、自分と他人との関係に加え、双方を律しているより上位の何かを踏まえる。その何か、第三の極には、自分と他人とがともに仰ぎみるべきものが位置する。たとえば、共有化された理念やゴールなどだ。マントはこう説明する。「三元型の人は、<自分は(この相手に)勝てるか?>ではなく、<何のためにわれわれは向きあっているのか?>を考える」。
とのこと。どちらがリーダーとして優れているかは場合によりけりでしょうが、「三元型」のリーダーには以下のような長所があると指摘されます:
このような人々は、大所高所、いわば見晴らしのよい場所から全体を俯瞰する。そして、一つには、自分と相手がともに目指すべき目標とは何か。そこにどう手を携えて到達するかを捉えようとする。またもう一つには、自分たちは今どんな状態か、目標と照らしてどの位置にいるのかを、自らも客観視した状態で捉えようとするのだ。
つまり三元型リーダーの頭の中には、「自分(リーダー)―相手(フォロワー)―上位の何か(理念や目標)」を頂点とする3角形ができあがっているわけですね。そして、「自分―相手」という関係性だけでなく、「自分と目標」「相手と目標」という関係性も意識し、適切な行動を取ろうと努力すると。
以前「指示しないリーダー」というエントリを書きましたが、「第3の視点を持つリーダー」というのも、これに近い発想かもしれません。彼らは自分の思いを相手に押しつけるのではなく、より上位にある価値を相手に意識させ、それを追うように促します。むしろ「リーダー」と呼べるのは組織の目標や理念であり、リーダーはその補佐をする役と考えられるかもしれません。先ほどの3角形のイメージで言うと、上にあるのは「理念や目標」で、リーダーとフォロワーは底辺の一辺を支える位置(すなわち同じレベル)にあるわけですね。
さらに、この3角形の関係性を根付かせることは、組織にとっても有益かもしれません。以前もご紹介した本"The Starfish and the Spider: The Unstoppable Power of Leaderless Organizations"(邦訳『ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ』)では、理念によって構成員の行動が律される組織を「身体の一部が切り取られても、それぞれが生きていくことができるヒトデ」に例えています。自分自身の個人的な思いではなく、理念によってメンバーを主導する「三元型」リーダーが主導する組織は、必然的にこの「ヒトデ型組織」になるでしょう。二元型のリーダーであれば、彼/彼女がいなくなった瞬間に、その組織は迷走してしまうはずです。
『ヒトデはクモよりなぜ強い』では、「頭や胴体が無くなれば死んでしまうクモ」を中央集権型組織に例え、現代社会においてはヒトデ型組織の方が強いと主張しています。ならば、これからのリーダーには「第3の視点」を常に意識することが欠かせなくなってくるのかもしれませんね。